リグニンの化学的反応性を規定する立体化学的要因の解明
【研究分野】林産学
【研究キーワード】
立体異性 / オゾン / リグニン / 光学活性 / パルプ / 漂白 / トレオ / エリトロ / オゾン分解 / 化学構造 / 立体化学
【研究成果の概要】
オゾン分解法スキームの改良により、リグニン中の最も主要な構造であるarylglycerol-β-aryl ether構造からのオゾン分解生成物であるerythronic acid、threonic acidの収量は安定して70%以上に達し、立体異性体比であるerythro/threo比を示すerythronic acid/threonic acidの比も極めて安定した。これにより、オゾン分解法を同構造について立体構造を含めた定量法として確立することができた。
この手法を用いて、主要構造であるarylglycerol-β-aryl ether構造の立体異性体のうち、erythro体は光学的に不活性であることを証明し、threo体もほぼ光学不活性と考えられる証拠を得た。これはリグニンの光学活性という大問題に対するはじめての実証的アプローチである。
木粉のアルカリ系脱リグニン反応の進行とともに残存リグニン中のarylglycerol-β-aryl ether構造の異性対比(erythro/threo比)は極めて小さくなる。これは、アルカリ脱リグニン反応が見かけ上、リグニン構造の立体化学に依存しており、極めて小さなerythro/threo比を有するリグニンがアルカリに対する反応性が低いために残存したことを示す。一方、亜塩素酸による酸化的脱リグニンでは、そのような現象が認められず、亜塩素酸の反応は同構造の立体化学に左右されないことが示された。
他方、同じ酸化分解でも過マンガン酸カリ等を用いた場合は、erythro体の方がthreo体よりも早く分解することが分かった。芳香核の酸化分解が側鎖部分の立体構造に規定されている事は極めて興味深い。
以上、リグニンの化学的反応性がその立体構造と密接に関係していることを実証した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
新谷 博幸 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
飯塚 堯介 (飯塚 京介) | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1998 - 2000
【配分額】10,900千円 (直接経費: 10,900千円)