生分解性脂肪族ポリエステル単結晶の結晶構造と酵素分解性の相関解明
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
生分解性脂肪族ポリエステル / ポリエチレンサクシネート / 単結晶 / 透過型電子顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 結晶構造 / 表面構造 / 酵素分解機構 / 配向結晶性フィルム / X線繊維図
【研究成果の概要】
熱可塑性高分子材料であるポリエチレンサクシネート(PES)は、自然環境中に存在する微生物が菌体外に分泌する分解酵素により加水分解される、生分解性脂肪族ポリエステルの一つである。本年度は、PESの単結晶を生成し、その結晶構造及び表面構造を解析すると共に、ポリヒドロキシブチレート(PHB)分解酵素による分解機構及び酵素吸着機構に関する検討を行った。PESの単結晶は、モノクロロベンゼン希薄溶液より等温結晶化法にて生成した。単結晶は結晶化温度により、樹状結晶、菱形スパイラル結晶、菱形積層結晶をとることが分かった。菱形積層結晶は非常にシャープな回折点を与え、電子回折図の全ての回折点は、a^*軸とb^*軸の直交格子上に位置し、b^*軸においてのみ消滅則が成立したことから、二次元空間群はp2mgであることがわかった。ポリエチレン修飾法による単結晶の透過型電子顕微鏡観察より、単結晶表面において、分子鎖は折れ曲がり構造をとっていることが明らかになった。さらに、原子間力顕微鏡による結晶厚の測定から、単結晶のモノラメラの結晶厚は、7-8nmであることがわかった。免疫電子顕微鏡法により酵素の結晶表面への吸着を検討したところ、PHB分解酵素は単結晶表面に均一に位置的特異性なく吸着することがわかった。しかしながら、単結晶の分解は結晶表面からではなく結晶側面から進行することが分かった。分解途中の単結晶の分子量と結晶厚に変化が見られなかったことから、酵素は結晶表面の分子鎖の折れ曲がり部分を分解できないことが分かった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)