細胞からリポソームへの膜蛋白質の転移に関する研究
【研究分野】高分子物性・高分子材料
【研究キーワード】
膜タンパク質 / リポソーム / 人工境界脂質 / リポソームワクチン / 癌 / 赤血球 / リポソ-ム / リポソ-ムワクチン / 膜タンパク再構成リポソ-ム / 人工ワクチン
【研究成果の概要】
近年のタンパク質化学の目覚ましい進展に伴い、タンパク質群の構造および機能解析は著しく進んだ。しかし、その殆んどは可溶性タンパク質についてであり、細胞膜タンパク質に関しては非常に遅れているのが現状である。本研究では、リポソームと生細胞を混合すると、細胞表層の膜タンパク質がリポソーム側に温和な条件下に転移してくることに着目し、この手法を細胞膜タンパク質の機能解明に巾広く利用する目的で種々の検討を行なった。具体的には、実際の細胞膜中での膜タンパク質の存在様式を調べ、膜タンパク質の周囲に存在する境界脂質(boundarylipid)の重要性を考慮し、人工境界脂質(DDPC)を分子設計・合成した。まず、種々のDDPC含有DMPCおよび卵黄レシチンリポソームとヒト赤血球とを相互作用させ、細胞からリポソーム側へ転移してくる膜タンパク質量とリポソーム組成との相関を調べた。その結果、DDPCを添加することにより、タンパク質の転移効率が有意に増大すること、さらにリポソーム中のDDPCの添加量を変える事で、転移してくるタンパク質の種類を制御しえる事も明らかになってきた。また、赤血球膜中の膜酵素の一種であるアセチルコリンエステラーゼが、その活性を90%以上保持したまま、リポソームに再構成されることもわかった。次に、癌細胞(放射線誘導癌細胞・Balb RVD)から抗原提示タンパク質を直接リポソームに移行、再構成させリポソームワクチンを作成し、マウスを使った実験で高い抗腫瘍効果の発現に成功した。この手法は、従来法と比較して抗原性タンパク質の化学的変性も起こらず、より高い免疫能が得られることも実証しており、新しいワクチン調製法として今後おおいに展開が予想される。
【研究代表者】