固体高分解能NMRによる微生物由来の共重合ポリエステルの結晶化挙動の研究
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
固体高分解能NMR / 生分解性プラスチック / 共重合体 / 高分子結晶 / ポリエステル / 固体NMR
【研究成果の概要】
或る種の微生物が産生するポリエステルは生分解性・加水分解性を示すので注目されている。このようなポリエステルの代表例は3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシ吉草酸共重合体(PHB-HV)などの結晶性共重合体である。これら共重合体の生分解性を含む物性は単量体組成に強く依存するので単量体組成の決定は重要である。
平成6年度の研究では,水素細菌Alcaligenes eutrophusを使用して発酵合成した数種類のPHB-HV(3-ヒドロキシ吉草酸組成0〜約25%)について,単量体組成と熱的性質および結晶化挙動を検討し,さらにクロロホルム/n-ヘプタン混合溶媒による分別から組成分布を検討し,本試料は大きな組成分布を持つことを明らかにした。
平成7年度の研究では,組成分別した分布の狭いPHB-HVについて示差走査熱量計にて熱的性質を,偏光顕微鏡により結晶化挙動を観察した。その結果,結晶化挙動と結晶融解挙動は組成分別前と後では著しく異なり,分別前の共重合体試料では3-ヒドロキシ酪酸組成の高い成分が優先的に結晶化するが両単量体単位を含む共結晶も生成すること,未分別試料の性質はその平均単量体組成を反映した性質になるとは必ずしも限らないことなどを明らかにした。さらにAlcaligenes eutrophusにより発酵合成した数種類の3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシプロピオン酸共重合体についても結晶化挙動,熱的性質を調べたほか,固体高分解能^<13>C-磁気緩和時間の測定により分子運動性を評価した。その結果,この共重合体の結晶化挙動および熱的性質は単量体組成に依存して大きく変化すること,3-ヒドロキシ酪酸組成の高い共重合体では3-ヒドロキシ酪酸単位のみが結晶化し,3-ヒドロキシ酪酸-3-ヒドロキシ吉草酸共重合体で認められたような共結晶化は起こらないことなどを明らかにした。
【研究代表者】