共役系高分子を用いた自己組織型分子被覆導線の電気物性
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
導電性高分子 / 共役系高分子 / 分子被覆導線 / 分子導線 / 超分子 / 包接錯体 / 原子間力顕微鏡 / ナノテクノロジー / 分子内導電率
【研究成果の概要】
我々は、最近絶縁性の環状分子であるシクロデキストリン(CD)を代表的な可溶性共役系導電性高分子であるポリアニリン(PANI)と溶液中で混合したところ、紐状の導電性高分子の回りに環状分子が自発的に集合し、ネックレス状の分子集合体いわば分子被覆導線が形成される現象を見出した。本研究では、このような環状分子または環状分子から合成される分子ナノチューブと導電性高分子からなる自己組織型分子被覆導線を作成し、分子被覆導線の分子配線としての有用性を実証することを目指した。
初年度は新規に原子間力顕微鏡(AFM)を導入し、CDあるいは分子ナノチューブとPANIからなる分子被覆導線の観察を試みた。AFMのノンコンタクトモードを用いて測定を行った結果、CDあるいは分子ナノチューブがPANI1本を単離して包接した棒状の錯体、すなわち分子被覆導線の観測に成功した。特に、分子ナノチューブとPANIについては、室温でしかも高い収率で分子被覆導線が得られることがわかった。さらに、AFMのカンチレバーを分子に接触させて動かすことにより、分子を移動したり、切断したりすることが可能であることが明らかとなった。分子をマニピュレートして任意の位置におく技術は、任意の2点間を分子被覆導線を用いて配線する際に重要である。
フィルム状の導電性高分子はドーピングを施さない状態では半導体または絶縁体であることが知られているため、次年度はドーピングを施した分子被覆導線の作成を試みた。分子被覆導線には架橋部分に隙間が存在し、小さなドーパントが入り込める可能性が高い。このため、分子被覆導線を作成した後にドーピングを行ったところ、光吸収測定およびAFM観察から分子被覆導線はドーピング可能であることが明らかとなった。
本研究において得られた知見は、現在ナノテクノロジーの中心課題である分子素子作成において問題となっている機能性分子間の配線材料に新しい方向性を与えるものである。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
下村 武史 | 東京大学 | 大学院・新領域創成科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】11,400千円 (直接経費: 11,400千円)