有機EL燐光材料の単一分子レベルでの発光研究
【研究分野】機能材料・デバイス
【研究キーワード】
1分子計測(SMD) / 化学物理 / 光物性 / 構造・機能材料 / 単一分子分光 / イリジウム錯体 / 励起状態寿命 / 走査型共焦点顕微鏡
【研究成果の概要】
本研究では、単一分子分光法を用いて燐光発光材料であるイリジウム錯体の光物性を1分子レベルで研究した。代表的なイリジウム錯体Ir(ppy)_3の単一分子レベルでの燐光の発光強度、発光継続時間を測定した結果、一般の蛍光色素に比べて幅広い発光強度分布及び非線形的フォトブリーチング特性を持つことが分かった。これらの原因としては錯体の構造の歪みや配位子の化学的劣化による吸収断面積の違いが生じると考えられる。この点を明確するために一個の配位子の異なる錯体Irfppy(ppy)_2を合成し、単一分子の発光観察を行った。結果として、アルデヒド基の付いた配位子のみから発光するIrfppy(ppy)_2も幅広い強度分布を示したからIr(ppy)_3もPMMA中で構造が歪む、その結果3つの配位子のエネルギー準位に違いが生まれ、安定な配位子から発光している可能性が考えられる.一方、ピコ秒レーザと時間相関単一フォトン計数の方法を用いてイリジウム錯体Ir(ppy)_3の励起状態緩和をアンサンブル及び単一分子レベルで調べた。アンサンブルレベルでは通常の1.1μs寿命が得られた。しかし、試料の濃度を薄くするとともに、1.1μs寿命の他に3nsの短い寿命成分が表れた。励起光の周波数依存性測定の結果で、レーザパルスの間隔が長くなると短い成分の割合が増える。即ち、短い成分の原因が基底状態からの吸収過程であることが分かった。励起光の強度依存性で短い成分が二次関数的、長い成分が一次関数的に増えたから、短い成分の原因が二光子吸収であると考えられる。一光子励起と二光子励起の単一分子イメージングを行ったところ、488nmの励起光を用いて発光を370と450nmの間で検出したときの1分子イメージが、一光子励起メージとほぼ同じであった。二光子励起が配位子中心のπ-π^*遷移である。二光子励起後、エネルギーがπ^*から内部転換で^1MLCT状態に落ち、そこから寿命の短い蛍光が発光することが明らかになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
佐藤 壽彌 | 東京農工大学 | 大学院共生科学技術研究部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2004 - 2005
【配分額】3,400千円 (直接経費: 3,400千円)