情報科学・理論・実験の融合によるネットワークガラスの高次多体相関解析
【研究キーワード】
ガラス / 中距離秩序 / 機械学習 / 量子化学 / 大規模系計算
【研究成果の概要】
非晶質材料に内在する秩序の記述および効率的な計算法の開発のために、理論計算による大規模な構造モデルの構築、量子ビームによる計測データから秩序を同定する方法の開発、また、実験データに適合する構造モデルから中距離秩序を抽出する試みを行った。
大規模な構造モデル構築の課題において、構造エネルギーや原子にかかる力を高速に計算するために機械学習モデルの開発に取り組んだ。訓練データとして、DC-DFTB法を用いてシリカの様々な構造に対して計算した結果を用意した。DC-DFTB計算に対して、全エネルギーを構成原子に割り当てるエネルギー密度解析を用いて、学習データを高効率的に収集することが可能となった。こうして生成された訓練データに対して、原子配置に関する記述子を入力として、機械学習モデルを構築し、予測性能を検証した。
計測データ解析の課題では、Åビーム電子回折実験を計算機において仮想的に行うヴァーチャルÅビーム電子回折法を開発し、計算ホモロジーおよび分子動力学法と組み合わせることで、代表的な金属ガラスであるPd-Siのトポロジー的な秩序領域から得られる電子回折の特徴を調べた。その結果、トポロジー的な秩序領域では1nm以上にわたり方向の揃った擬格子面が形成されており、これに対応して回折パターン中に強い強度のスポットが出現することがわかった。
また、温度と圧力を精密に制御して合成した永久高密度化シリカガラスについて、その高密度化のメカニズムを量子ビーム実験と構造モデリング、トポロジカル解析を駆使することによって明らかにした。ガラスの3次元構造モデルをSPring-8、海外の原子炉・パルス中性子源を利用して測定した量子ビーム実験データを再現する構造モデルを構築し、化学結合によるネットワークが形成するリング、原子分布が形成する空隙を解析することで、永久高密度化ガラスの構造秩序の起源を明らかにした。
【研究代表者】