レドックス型イオン結晶格子を利用した金属クラスターの創成と機能開拓
【研究キーワード】
ポリオキソメタレート / 複合材料・物性 / 金属酸化物 / 発光スペクトル / 固体NMR / イオン結晶 / 金属クラスター / 分子性アニオン / 固体NMR / 触媒
【研究成果の概要】
10個程度の銀原子からなる小核銀クラスターは、離散的な電子構造・特殊な原子配列・比表面積の大きさなどから、バルクの銀とは異なるユニークな電気伝導性・磁性・発光特性・触媒活性を示すが、その性質はわずか原子1個のサイズ増減で大きく変化するため、そのサイズを制御した合成法の開発は基礎・応用を問わず重要となる。しかし、一般に小核銀クラスターは極めて不安定で、その合成・安定化にはいまだ課題が残る。従来、小核銀クラスターの合成法としては気相での合成法と液相での保護配位子を用いた合成法が知られていたが、いずれもサイズ選択性と収量がトレードオフとなり両立できないという欠点があった。昨年度、レドックス活性な分子性遷移金属酸化物で多価アニオンであるポリオキソメタレート(POM)と分子性カチオンであるクロム三核錯体多孔性イオン結晶(Porous Ionic Crystals, PICs)の細孔内で、POMからの電子移動を利用して4核の小核銀クラスターが形成されることを報告した。今年度は、PICsを用いた小核銀クラスター合成法をさらに精密な銀クラスター合成法として確立するために、Dawson型POM(POMの種類を変更)からなるレドックス活性なPICの細孔内部で小核銀クラスター合成を行い、種々の特性評価によってPIC中の導入銀量-貯蔵電子数-クラスターサイズの相関を明らかにした。その結果、小核銀クラスターの極大発光波長は、クラスターサイズの増大に伴って長波長シフトし、これは事前に結晶に貯蔵された電子の数に応じて、形成されるクラスターのサイズが増大することを示唆している。これらの試料に対しX線光電子分光及びX線吸収微細構造の測定・解析を行ったところ、上記の貯蔵電子数とクラスターサイズとの関係を支持する結果が得られた。これらのことから、PICs中のPOMの貯蔵電子数を制御することで形成される小核銀クラスターのサイズを3核から6核まで制御できることが明らかになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
立川 貴士 | 神戸大学 | 分子フォトサイエンス研究センター | 准教授 | (Kakenデータベース) |
野田 泰斗 | 京都大学 | 理学研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)