擬一次元ハロゲン架橋混合原子価錯体におけるソリトンとポーラロンのダイナミクス
【研究分野】無機化学
【研究キーワード】
擬一次元ハロゲン架橋混合原子価錯体 / ソリトン / ポーラロン / 電荷密度波 / 擬一次元金属錯体 / 混合原子価錯体 / ハロゲン架橋金属錯体
【研究成果の概要】
ハロゲン架橋混合原子価錯体の基底状態がポリアセチレンに似ていることから理論面からソリトンやポーラロンの存在が予言されていた。ここでは鎖間相互作用が一次元的な〔Pt(en)2〕〔Pt(en)2I2〕(ClO4)4と二次元的な〔Pt(ch×n)2〕〔Pt(ch×n)2Br2〕Br4の光誘起吸収スペクトルによるソリトンとポーラロンの生成制御について報告する。前者の化合物では鎖間に相互作用がないため鎖内ではM^<2+>とM^<4+>は交互に並んでいるものの、鎖間ではそれらは相関がなく自由に並んでいる(1D-CDW).一方、後者の化合物では隣接する鎖間がカウンターイオンとの水素結合により強く二次元的につながれているため鎖間での相関は強く、鎖間でM^<2+>またはM^<4+>同士は同じ位相で並んでいる(2D-CDW)。光誘起吸収スペクトルにおいて前者の化合物ではM^<2+>→M^<4+>CT吸収帯の低エネルギー側(ミッドギャップ)に3本の新しい吸収が現れるが、後者の化合物では2本しか現れない。これらの経時変化、吸収帯の数、位置などからbはソリトンに、それ以外はポーラロンに帰属される。ポーラロンは同一位相中の欠陥として現れるため次元性の違いに関わらず両化合物で観測される。一方、ソリトンの出現は構造の次元性の違いに大きく依存しており、鎖間の相関を考慮することにより説明された。つまり、1D-CDW系化合物では鎖間の相関がないため鎖の位相が途中で逆転することによりソリトンは容易に生成されるが、2D-CDW系化合物では鎖間に強い相関があり位相が二次元的に揃っているため一つの鎖の位相が途中で逆転することは難しくソリトンが生じない。このようにして鎖間相互作用の違いによりソリトンの生成を制御することができるようになったが、このようなことはポリアセチレン等の有機共役高分子化合物ではできなかったことである。さらに光誘起吸収スペクトルの温度変化によりポーラロンがキャリアーであることを明らかになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
岡本 博 | 東北大学 | 科学計測研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1994 - 1995
【配分額】6,700千円 (直接経費: 6,700千円)