不安定な三重項カルベンとナイトレン類のX線構造解析とその反応性の比較
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
三重項カルベンの構造 / 三重項ナイトレンの構造 / X線解析 / 不安定中間体の構造 / 励起構造の解析 / 白金錯体の励起状態 / ジアゾメタン結晶 / アジド化合物結晶 / 不定中間体の構造 / カルベン / ナイトレン / 結晶構造 / 光解離 / 不安定構造 / 反応中間体 / 放射光
【研究成果の概要】
化学反応を理解するには、反応途中に生成する中間体を捉えて、その性質を知ることが不可欠である。従来の研究では、レーザーと組み合わせた高速分光学の進歩によって、フェムト秒でしか存在しない不安定な中間体の存在も明らかにしてきた。しかしその中間体の構造についてはほとんど知られていない。本研究では、有機化学反応にしばしば見られる三重項カルベンや三重項ナイトレンの構造を解析することを目標とした。カルベンの場合はジアゾメタンの結晶、ナイトレンの場合はアジド化合物の結晶に、80Kという低温下で紫外光を照射して、結晶内に不安定な三重項カルベンや三重項ナイトレンを生成し、この構造を解析することを試みた。従来の結晶構造解析では不可能であったが、結晶内部まで変化させるため長波長の光を利用することと、結晶格子を壊さないように80Kという低温でデータ測定することで一部成功した。しかしそれでも結晶が崩壊するか、結晶中に生起した不安定なカルベンやナイトレンがわずかで構造を捉えることが困難な場合は、反応物のジアゾメタンやアジド化合物と複合体を作るホスト分子を導入したホストーゲスト結晶を作製し、この結晶に光を照射することで不安定種をホスト分子が作る格子の中に比較的多量作ることができた。単体の結晶では10%程度の不安定種の生成量がホストーゲスト結晶では30%程度まで増加させることができ、構造解析の精度が飛躍的に向上した。これらの解析結果から得られた三重項カルベンやナイトレンについて理論計算で求めた構造と比較すると、通常の近似法では全く一致しないが、近似の精度を上げると、実験値と一致した。このことによって、これまで不安定種の場合には不明であった理論計算の精度を直接検証することができた。さらに白金錯体の励起構造を解析することも試みた。白金錯体結晶に紫外光照射しながらに構造を解析して、結晶中の白金-白金距離が短縮することを実験的に確認した。Spring-8でデータを収集することによって、その短縮値も定量的に求められた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
関根 あき子 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
植草 秀裕 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2002
【配分額】15,000千円 (直接経費: 15,000千円)