素反応経路の実験と理論計算による研究
【研究分野】物理化学一般
【研究キーワード】
反応経路 / 反応速度定数 / 遷移状態 / 単分子反応 / 衝撃波管法 / ab initio計算 / 素反応速定数 / 赤外線レーザー加熱 / 素反応速度定数 / 衝撃波管
【研究成果の概要】
1)素反応過程を実験的に観測することは極めて困難で、実測値がはたして素反応に対応するかどうかについて十分な検討が必要である。本研究実績の一つは、素反応速度定数をかなりの精度で実測することを可能にしたことである。これは非経験的計算との比較が十分可能であり、その結果、ある系では理論と実測値が一致し、また別の系では大きな違いを示した。この事実からプロピナ-ルでは、その分解の遷移状態で特定の振動モ-ドがとくに励起され、そのことが分解速度を異常に大きくしていることが判った。
2)単分子反応が継続して起こるような反応系では、第一段階の遷移状態を経由して生じた分子のエネルギ-や構造が次におこる反応を支配することが考えられるが、分子内・分子間エネルギ-緩和が反応に比べて速いため従来の実験では観測不可能であった。本研究では注意深い実験により2つの効果を見いだした。すなわち、2段階目の反応速度が速くなること、および2段階目の競争反応の分岐比が第一段階の反応を経由しない場合と異なることである。エステルの分解で生じるカルボン酸の競争的分解反応では各反応段階の遷移状態を計算し、それらの構成原子の運動モ-ドから競争反応の分岐比に関して十分な解釈ができた。これに反してピランの分解で生じるアクロレインの分解では、基底アクロレインの分解の分岐比と同じであった。このことはピランの分解で生じるアクロレイン分子は特に励起されないことを意味し、実際計算による遷移状態の構造からこのことが確かめられた。
3)反応速度論に分子軌道法を用いて計算した遷移状態が如何ほどの意味があるかについては議論が活発に行なわれているところであるが、本研究において得られた結果によれば、明らかに実験事実と分子軌道計算とは一致した結論を導くことが確かめられた。
【研究代表者】