ハミルトニアンの解析接続法による分子の超励起状態および光イオン化過程の理論的研究
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
共鳴状態 / 光イオン化 / 複素座標法 / 微分基底関数 / STO / GTO / 遺伝的アルゴリズム / Newton-Raphson法 / 超励起状態 / 自動イオン化 / 軌道指数最適化 / スピン軌道相互作用 / 振動数依存分極率
【研究成果の概要】
原子・分子に見られる量子力学的共鳴状態の準位や寿命、光イオン化断面積などを定量的に計算する手法の一つである複素座標法を発展させるために、その基底関数に含まれる複素数軌道指数の最適化法を研究した。
1.1次元モデルポテンシャルを用いて、微分基底関数(STOの場合、共通の軌道指数を持つ1s,2s,3s,・・・,の関数、GTOの場合、1s,3s,5s,・・・,の関数)を用いると、複素数共鳴状態エネルギーのθ依存性が、従来の基底関数に比べ、数桁小さく出来ることを確認した。この微分基底関数によると、いわゆるθトラジェクトリーの計算は不要になる。さらに、STOの場合、1s,2s,3s..,(k-1)sが共通の軌道指数を持ち、さらに、ksが別の軌道指数を持つように最適化して、あるいは、さらに1s,・・・(k-2)sと(k-1)sとksのそれぞれの軌道指数を独立に最適化することで、より少ない基底関数でさらに良好な結果を得た。この最適化においては、遺伝的アルゴリズムとNewton-Raphson法を適用することで、非常に多くの複素数最適解を探索できた。
2.光イオン化の断面積は、振動数依存の分極率α(ω)の虚数部分から得られ、またその表式が、変分的安定性を持っていることに着目すると、分極率の変分量が零となるパラメーターが、光イオン化断面積を求める上で最適となる。そこで、水素原子の1s→kp,2p→kd,2p→ksに対する光イオン化を取り扱い、基底関数としては、STOおよびGTO型を用いて基底関数に含まれるパラメーターを最適化した。STO, GTOともに複素軌道指数の最適化を行うことにより、1〜2個の少数の基底関数で、解析解と良く一致する光イオン化断面積を得ることが出来た。一般的な多電子系に関しても、効果的に光イオン化断面積の計算が出来るものと期待される。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】3,700千円 (直接経費: 3,700千円)