高エネルギー光電子分光法開発と高誘電率膜/シリコン界面の化学結合状態分析への応用
【研究分野】薄膜・表面界面物性
【研究キーワード】
放射光 / 光電子分光法 / 角度分解光電子分光法 / ゲート絶縁膜 / 高誘電率膜 / 希土類酸化膜 / 最大エントロピー法 / 誘電率 / 電子帯構造 / 希土類金属酸化膜 / 高エネルギー光電子分光法 / シリコン界面 / 硬X線
【研究成果の概要】
硬X線光電子分光に必要となる電子エネルギー分析器R4000-10keVをガンマデータ社の協力のもとに開発した。半値幅60meVのエネルギー5.95keVの放射光を利用できるアンジュレータ・ビームラインBL29XUとBL47XUにおいてエネルギー分解能45meVの電子エネルギー分析器を用いて、全エネルギー分解能75meVの光電子分光を達成した。しかし、1)電子エネルギー分析器の耐圧を8keV以上にできない、2)電源ボードの近くに熱源があるために、検出した光電子の運動エネルギー値が不安定となる、3)光電子検出部を構成するMCPとCCDの最小空間分解能が非常に近いためにモアレによる雑音が現れる、などの問題点が見つかった。そこで、1)電子エネルギー分析器内部の絶縁度を高める、2)スペクトログラフ読み出し用光学系の倍率を変更する、3)CCDをピクセル数の大きいものに取り換える、などの改良を行った。その結果、エネルギー分解能がフォトン・エネルギー8keVにおいて75meV、10keVにおいて90meVとなった。この硬X線光電子分光システムを用いて、次々世代のCMOSデバイスのゲート絶縁膜として期待されているLaO_x/Si界面の熱安定性を角度分解La 3d・Si ls・O ls光電子スペクトルを測定することにより調べた。その結果、この界面を常圧窒素雰囲気中400℃以上で熱処理すると界面においてLaシリケートが形成されることが明らかとなった。LaO_x/Si界面組成遷移層における組成と化学結合形態を、これら角度分解スペクトルに最大エントロピー法を適用して決定した。その際、高分解能ラザフォード後方散乱で決めた元素組成の深さ方向変化を初期組成分布として用いた。この解析により、組成遷移層の膜厚は400℃以上での熱処理により増加することが明らかになった。
【研究代表者】