ATRラマン分光法による強誘電性液晶の電界スイッチングの界面制御機構に関する研究
【研究分野】機能・物性・材料
【研究キーワード】
ATRラマン分光法 / 液晶 / 強誘電性液晶 / 電界スイッチング / 界面制御 / 時間分解ラマン分光法
【研究成果の概要】
ATRラマン分光法による液晶セルの電界スイッチング機構を明らかにするために以下の研究を行った。
ATRラマン測定用液晶セルの作製 高屈折率ガラス(LaSF-08,n=1.89)の円筒プリズムの底面にIn_2O_3をスパッター蒸着して導電性透明電極となし4-ヘプチル-4′-ビフェニル(6CB)の液晶セルを作製した。表面配向処理はSiOの斜方蒸着法(蒸着角度60度)により行い、電界印加時のダイレクターの回転面が励起レーザー光の入射面に対して平行と垂直の二種類(s-およびp-コンフィギュレーション)のセルを用意した。
時間分解ATRラマン測定用分光器の製作 明るい単分散分光器(F-値4.0)とノッチフィルターを用いて時間分解ATRラマン測定用分光器の製作した。励起光源にNd-YAGレーザーの532nm(パルス幅15ns)の発振線を、また検出器としてICCD検出器を用いて6CBの良好なATRラマンスペクトルを得た。
ATRラマンスペクトルの印加電位依存性の測定 液晶セルに0〜10Vの範囲で電位を変化させ100Hzの交番電位を印加し、スペクトルを測定した。(入射角は54.5および60.3度に固定した)励起光の入射面に対して励起光の偏光方向を平行と垂直とし(p-とs-偏光)、かつダイレクターの回転面についてs-とp-コンフィギュレーションの場合の4種類の配置について測定を進めた。s-偏光、s-コンフィギュレーション((ss)配置)での測定結果から液晶セルは印加電位1V以上で配向し、6V以上で平衡に達することが分かった。
印加電位依存性のシミュレーション 誘電率異方性を考慮した液晶セルの厚さ方向の電場強度計算し、s-およびp-コンフィギュレーションでのダイレクターの回転角(theta)の関数としてラマン散乱強度を計算するためのプログラムを作製した。(ss)-、(ps)-、(sp)-および(pp)-配置におけるtheta=0度での偏光ATRスペクトルの測定結果から液晶のラマン散乱テンソル成分を見積り、既存の誘電率異方性の測定結果を用い、上記のプログラムによって実際の測定結果のシミュレーションを行い、実測のデータとの良好な一致を見た。
時間分解ATRラマンスペクトルの測定 印加電位、電位幅、繰返し時間(周波数)を変化させつつ時間分解スペクトル測定を行って、セルの電場応答性を調べるための最適条件を求めた。電場を5Vに6ms、0Vに194ms印加した場合(10Hz)の(ss)-配置での測定し行い、2226cm^<-1>のCN-伸縮振動と1608cm^<-1>のフィニル環伸縮振動バンド強度の時間変化をもとに、電極近傍とバルクでの6CB分子の電場応答特性について比較検討した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
安田 章夫 | ソニー(株) | 中央研究所 | 総括課長 |
高橋 博彰 | 早稲田大学 | 理工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】試験研究(B)
【研究期間】1993
【配分額】5,500千円 (直接経費: 5,500千円)