極端軟X線定在波法の開発と有機凝縮系科学への展開
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
定在波法 / 極端軟X線 / 有機薄膜 / アゾベンゼン / 構造解析 / 液晶
【研究成果の概要】
本課題は、波長が20Å以上の極端軟X線をプローブとして、超格子基板の土に形成した有機薄膜の基板垂直方向の位置情報を定在波法によって調べる手法の開発を行い、実際の有機薄膜の構造研究へ応用することを目的としている。本手法では、散乱面に対する特定原子の位置情報をその原子からのX線光電子を検出することによって行うことに特徴がある。初年度の研究によって、極端軟X線と超格子基板(W/C)_<80>(d=30.9gÅ)による定在波発生の確認と、光電子検出による定在波プロファイルの測定と解析を行い、精度よく(誤差:0.5Å)構造情報が得られることを示した。2年目は、本手法を分子の配向情報が分かるX線吸収分光法と組み合わせて、有機薄膜の構造解析への応用研究を行った。
研究対象にした有機薄膜は、アゾベンゼンを含む長鎖カルボン酸分子の単分子膜である。紫外光照射によるアゾベンゼンの光異性化によって薄膜構造がどのように変わるかに注目して研究を行った。光照射前のtrans体の薄膜では、分子軸は表面垂直から約50度傾き、アゾベンゼン中の二つの窒素原子の中心は、基板表面から10.3Åの高さに位置する。375nmの紫外光を照射すると、詳細な実験の結果、窒素原子より下の部分は構造変化しないが、窒素原子より上の部分が折れ曲がり、表面垂直から30度の傾きでより立ち上がることが明らかになった。また、アゾベンゼンの共役平面は光照射によってより立ち上がる方向に変化する。これまで、アゾベンゼンを含む有機薄膜の研究はたくさんあるが、本研究はアゾベンゼンの光異性化に伴う単分子膜の構造変化を詳細に明らかにした初めての例である。今後、本手法は有機薄膜の構造解析手法の一つとして有用になると考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
太田 俊明 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
雨宮 健太 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】15,300千円 (直接経費: 15,300千円)