イオン化検出法による高感度赤外分光法の開発と分子・クラスターの高振動状態の研究
【研究分野】物理化学
【研究キーワード】
赤外分光 / 多光子イオン化 / 二重共鳴分光 / 高振動状態 / 分子内振動緩和 / 超音速ジェット
【研究成果の概要】
イオン化を利用した高感度赤外分光法を独自に開発した。このイオン化検出赤外分光法は赤外-紫外二重共鳴分光法の一種であり、赤外レーザーで生じる振動励起分子だけを紫外レーザーで選択的に非共鳴イオン化することで赤外吸収を測定した。選択的イオン化は、振動励起分子のイオン化に要するエネルギーが通常の分子に比べて大幅に低下する事を利用し、紫外レーザーの波長を適切に選択して実現した。この方法を赤外吸収がよく研究されておりイオン化効率の高いフェノール、ナフトール、アミン分子に適用し、試料濃度が極めて希薄な超音速ジェット中で赤外吸収を測定することに成功した。特にフェノールに関しては4倍音までの高次倍音の測定に超音速ジェット中で初めて成功し、この分光法が従来の赤外分光法に比べて極めて高感度であることを実証した。さらに高振動状態になるほど線巾が減少することを見出し、回転構造の寄与も検討した上で高振動状態の分子内緩和速度が減少していることを明らかにした。これは1つの化学結合にエネルギーが集中した高振動状態が長寿命になることに対応し、高振動分子による選択的反応の可能性を示唆する。また種々の同位体置換したフェノールのイオン化検出赤外スペクトルを測定し、高振動状態でも緩和がランダムな経路ではなく、特定の高次結合音振動(Door way state)を一旦経由して緩和することを明らかにした。Door way stateとしてはCH振動とCC振動の結合音が考えられる。また、アミン分子DABCOに対しても本分光法を適用し、赤外吸収のみならず振動励起分子の電子遷移を観測することで分子内振動緩和過程に於て振動の対称性が保存されることを明らかにした。さらに、ナフトール分子に関しては水、アンモニアとの溶媒和クラスターの赤外吸収の観測に成功しており、これを元にクラスター構造の解析及びその反応性との関連を検討した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
FUJII Masaaki | Okazaki National Research Institutes.Institute for Molecular Science, Professor | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】14,600千円 (直接経費: 14,600千円)