アト秒位相分解波動関数イメージング法による新規な量子選択性の研究
【研究キーワード】
アト秒物理 / 高次高調波 / 量子制御 / 波動関数イメージング / 極端紫外領域 / アト秒 / 原子位相 / 極端紫外光 / 光イオン化 / 電子波動関数 / 光電子分光 / 高強度レーザー / 波動関数 / 極端紫外レーザー / アト秒科学 / 超短レーザーパルス
【研究成果の概要】
原子位相とスペクトル位相とを分離した二次元アト秒測定法の開発:2017年に研究代表者らは、奇数次と偶数次を含むアト秒レーザーパルス(高次高調波)と、赤外光を用いた「三つのイオン化過程」による量子干渉を用いて、光イオン化により放出された光電子のf-波やp-波などの角運動量成分ごと(部分波)の位相と振幅を決定した結果をサイエンス誌に発表した。一方、測定された光電子の部分波の位相は、(1)原子に由来する原子位相(atomic phase)と(2)アト秒レーザーパルス(高次高調波)のスペクトル位相(spectral phase)との和であり、これらの寄与をわけて測定することは困難だった。原子位相とは、複素数で表される原子の双極子モーメントの位相と関係があり、理論計算結果と直接、比較しうる値である。そこで本研究では、「二次元アト秒測定法」により、アト秒高次高調波のスペクトル位相差を決定し、放出された光電子の角運動量成分ごとの部分波の原子位相を求めた。具体的には、基本波と二倍波を組み合わせて希ガスに集光し、奇数次と偶数次を持つアト秒高次高調波を発生させる。ここで、基本波と二倍波との相対位相差をアト秒精度で変えることにより、スペクトル位相を変化させる。次に、アト秒高次高調波と、基本波との時間差をアト秒精度で変え、これらの二つのパルスによるイオン化過程で放出された光電子の干渉を測定した。得られた結果を解析することにより、スペクトル位相の寄与を差し引き、それぞれのイオン化過程で生成したf-波やp-波などの部分波ごとの原子位相の関係を得た。光電子のエネルギーがゼロに近い領域では、正確な量子力学計算が一般に困難であるため、本研究の実験結果は新たな精度の良い量子力学計算方法の開発に寄与すると考えられる。本結果はPhysical Review A誌に発表し、プレスリリースを行った。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】34,580千円 (直接経費: 26,600千円、間接経費: 7,980千円)