ミリ波サブミリ波帯輝線銀河の無バイアス探査に基づく隠された宇宙星形成史の研究
【研究分野】天文学
【研究キーワード】
宇宙星形成史 / 銀河進化 / ダスト / ミリ波サブミリ波 / 超伝導検出器 / 輝線銀河 / 超伝導
【研究成果の概要】
研究4年次となる令和2年度は、オンチップ型超広帯域超伝導分光器という新しいコンセプトの観測装置を本格的な科学運用に投入することを目指し開発を進めた。特に、220GHzから440GHzという完全1オクターブの分光を実現するDESHIMA 2.0の設計・開発を進め、実際に観測運用に投入できるグレードの超伝導分光チップの製作に着手することができた。また、この分光器をチリで運用しているASTE望遠鏡に搭載するため、常温光学系、特に光軸合わせのための調整機能付き支え機構や強度較正のためのデバイスの開発・調達を進めた。また、LMT望遠鏡に搭載する多画素化したDESHIMAのための大型真空・冷却システムと、大規模読み出し回路システム(前年度までに調達済み)の調整や試験測定を実施することができた。
アルマ望遠鏡を使った観測により、本課題の主題であるダストに隠された銀河の研究を進めた。ハッブル宇宙望遠鏡による高い感度での観測でも検出されていない、可視光・近赤外線域で見逃されていた大質量星生成銀河を、アルマ望遠鏡によるサブミリ波帯観測で検出し、その物理的な性質を明らかにした。また、アルマを使って重力レンズ銀河団33領域をくまなく観測する大型プログラム ALMA Lensing Cluster Survey(ALCS, PI: 河野)のデータ解析が進み、可視光・近赤外線観測では見落とされているがサブミリ波で明るい星形成銀河が、銀河団の重力レンズ効果により3重像として観測されている現場を発見した。VLT/MUSEでの観測とあわせ、この天体は赤方偏移4.3における銀河群の一部であることを明らかにした。こうした可視光・近赤外線では見逃されているがサブミリ波で検出される銀河種族は、高密度環境をトレースしていると考えられ、初期宇宙での構造形成を理解する上で重要な手がかりを与えると期待される。
【研究代表者】