金星の雲の動的な熱構造の解明
【研究分野】超高層物理学
【研究キーワード】
金星 / 雲 / 赤外線 / 大気
【研究成果の概要】
すばる望遠鏡の赤外観測装置で金星雲頂の熱放射画像(波長8.6,11.3,17.6μm)を取得し,その空間構造と時間変化から雲層の力学を探る。前年度までに我々は,単一時刻の分光画像を放射輸送モデルを援用して解析し,雲頂に水平規模が数100kmの塊状構造があるなど雲の立体構造を明らかにしてきた。今年度はさらに5日間の観測機会を得て,その機会ごとに2時間の時間間隔で2回データ取得した。5日間の間に金星大気は大気の高速循環「超回転」のために東西に金星を一周する。このことを利用して,5日間の画像をつなぎ合わせれば,雲頂高度に存在する惑星規模の波動の構造をとらえることができる。こうして得た全経度をカバーする熱放射マップには,これまでに観察されてきた「横倒しのY宇模様」に似たパターンが見られた。Y字模様の成因はわかっていないが,今回初めて,これが雲頂温度(おそらく雲頂高度を反映する)の変動と連動した現象であることが明らかになった。このことはY字の成因に新たな制約を課すものである。
2時間の間の塊状微細構造の時間変化は,概ね上述の「超回転」による移流で説明できそうである。このことは,塊状構造が数時間以上の時間スケールを持つことを意味する。近年,欧州のVenus Expressによる紫外画像から雲頂に10km規模の塊状構造が存在することが見出された。これを本研究の結果とともに解釈すると,10km規模の(おそらく短寿命の)熱対流が集まって数100km規模の雲クラスターのような構造を組織しており,そのクラスターは比較的長寿命である,というシナリオが描かれる。これを理論的に詰めるべく数値モデリングを進めている。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】1,500千円 (直接経費: 1,500千円)