重水素負イオン源における同位体効果の物理メカニズムの理論的解明
【研究キーワード】
プラズマ / 核融合 / 加速器 / 重水素 / 負イオン源 / 数値シミュレーション / PIC法 / モンテカルロ法 / 負イオン / 同位体効果
【研究成果の概要】
本研究では、実機核融合用負イオン源や医療用加速器での重水素負イオン源について同位体効果と呼ばれる、水素放電プラズマの場合と異なる物理特性のメカニズムの解明を図る。特に負イオンと同時に引き出される電子電流の増加については、プラズマ生成領域のプラズマ密度増加が原因である事が実験的に示唆された。しかし、なぜ重水素化することでプラズマ生成領域においてプラズマ密度が増加するのかは分かっていない。そこで電子輸送解析用の大規模な数値シミュレーション(KEIO-MARCコード)と、その支援として水素と重水素の原子・分子衝突過程を考慮した0次元モデルによる解析の両方で研究を進めた。
まずKEIO-MARCコードによる数値シミュレーションでは、重水素化によって変化する物理モデル要素(非解離性イオン化反応、解離性イオン化反応、シースポテンシャル、クーロン衝突、解離性付着反応、振動励起反応、H2電子振動励起反応)を個別に試行した。この結果、特に水素と重水素の振動励起反応での増加率が最も大きく、約7 %の増加となった。物理モデル要素を個別に検証した密度増加率は約11 %であったのに対して、上記の物理モデル要素を全て導入した場合は約13 %の増加となり、密度増加に対して各物理モデル要素の相乗効果が現れた。次に0次元モデルについて、レート方程式に水素と重水素の振動励起状態に関わる相違のみを導入した。この結果、重水素化により密度が約1.7倍増加した。これは振動励起準位を介した水素と重水素のイオン化チャンネルの違いが重水素からのイオン化反応速度係数を増加させることを意味する。
KEIO-MARCコードによる数値シミュレーションおよび0次元モデル共に、重水素化によって密度が増加する事が示された。特に、これまでの検討範囲内では水素分子の振動励起状態の相違が密度増加に対する寄与が大きいことが分かった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
畑山 明聖 | 慶應義塾大学 | 理工学部(矢上) | 名誉教授 | (Kakenデータベース) |
星野 一生 | 慶應義塾大学 | 理工学部(矢上) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)