還流系を用いた中立的生態系実験の実現とその統計力学的解析
【研究分野】生物物理・化学物理・ソフトマターの物理
【研究キーワード】
生物物理学 / アクティブマター / バクテリア / 微小流体デバイス / 集団遺伝学 / 生態系 / 非平衡統計力学 / 微小流路
【研究成果の概要】
本研究では、微小流体デバイスを用いて二つの細菌集団を培養し、競合させるモデル生態系実験を実現して、その結果を統計力学的な見地から解析した。まず、高密度の細菌集団を均一な環境で培養し、長時間計測できる灌流型の微小流体デバイスを開発した。それを用いて、蛍光タンパク質で標識した二つの大腸菌株を培養したところ、二集団の占有領域にフラクタル状のパターン形成を見出した。我々は、パターンの統計的特徴や菌の配向秩序との関係の解析を通し、本問題でトポロジカル欠陥が担う役割を提案した。また、競合過程を表す理論模型を提案し、数値計算と理論解析から、非平衡統計力学におけるvoter普遍クラスとの関係を明らかにした。
【研究の社会的意義】
本研究により、本来極めて複雑な存在である生態系や遺伝子集団の統計的変遷についても、中立的な生物種の競合過程については比較的単純な統計物理的概念によって解析や解釈が可能であることが示唆され、生態系、集団遺伝学、統計物理学、アクティブマター物理学等の境界領域に更なる研究の糸口を作ることができた。また、本研究で開発した新たな微小流体デバイス「広域マイクロ灌流系」は、高密度細胞集団が関わる様々な研究課題で有用であろうと期待でき、今後の基礎研究や応用研究に活用され、発展に貢献する可能性がある。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
若本 祐一 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2016-04-01 - 2020-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)