彗星塵とされてきた宇宙塵は彗星起源なのか?:分析と分光観測からのアプローチ
【研究キーワード】
宇宙塵 / TEM / nanoSIMS / STXM-XANES / 分光観測 / 透過電子顕微鏡 / NanoSIMS / 中間赤外分光 / 顕微拡散反射スペクトル / 南極微隕石 / 中間赤外 / 小惑星 / 彗星
【研究成果の概要】
顕微拡散反射スペクトルを測定する方法を確立できた。昨年度末にPierre Beck博士に各種の隕石とスペクトラロンをいただき,カンラン石と低Ca輝石の小片,Ti3O4粉末も測定した。微粒子からの拡散反射光は微弱であるため,光源と分光器本体以外の顕微鏡本体を小型暗幕に格納した。分光器CCDの暗電流をバックグラウンドとして引いていたが,それでは不十分で,試料の無い状態で光を入れ測光しバックグラウンドとして引く必要があると判明し,試料はスライドグラス上に載せることもバックグラウンド低減に必要であった。そして,スペクトラロン小片の顕微拡散反射スペクトルをそのバルク反射スペクトルと同形状になるように補正した係数を,試料に適用することで,スペクトル形状は大幅に改善した。さらに数十個の南極微隕石(AMMs)の顕微拡散反射スペクトルを測定できた。5個のAMM sについて透過電子顕微鏡(TEM)分析を行えた。雪を凍結乾燥して回収した微粒子からは,昨年度は4個,今年度は16個のAMMsを発見できた。4個をTEM分析することを試みた。2試料は硫黄包埋作業時になくしたが,2試料はTEM分析できた。それらはChondritic porous MMとfine-grained hydrated MMであった。これら2個については,雪を融解ろ過したAMMsとは構成要素の組成に顕著な違いはなかった。4個のAMMの軽元素X線吸収端微細構造(XANES)スペクトルを測定したが,試料汚染の兆候がみられよい結果は得らなかった。高空間分解能二次イオン質量分析(nanoSIMS分析)は,コロナウィルスの蔓延によって研究所を訪問することができず,測定はできなかった。分光観測も行うことができなかったが,不活発な短周期彗星の反射スペクトルについての過去のデータを解析して,脱水した含水鉱物が表面に存在することを発見した。
【研究代表者】