西オーストラリアにおける地球最古生命化石の探索
【研究分野】地質学
【研究キーワード】
太古代 / 緑色岩帯 / 海嶺 / チャート / 最古化石 / バクテリア / 熱水 / ピルバラ / 最古生命化石 / 展張応用力 / 付加体 / 中央海嶺 / 熱水活動
【研究成果の概要】
ピルバラ地塊東部に位置する表題地域の太古代前期(約35億年前)の緑色岩帯に関する1997年夏の野外調査の結果、従来の解釈と大きく矛盾する多くの新知見が得られた。特に、かつて太古代の大陸地殻上で形成されたとみなされた緑色岩帯の諸岩石が、実際には海洋中央部の古海嶺でおきた堆積・構造運動の産物であること、また最古生命化石が古海嶺の熱水起源チャートから産することが判明し、初期生命の生息環境について初めて具体的な証拠を得ることができた。新事実:1)緑色岩および累重する層状チャートはいずれも海洋域起源の岩石であり、直接陸域から由来した陸源砕屑性堆積岩は含まれない。2)層状チャートの基盤である枕状溶岩は正断層系で支配され、断層面に沿ってTチャートと呼ばれる微晶質シリカ脈が貫入している。調査地域全体を通してTチャートの分布パタンは系に類似する。3)緑色岩を貫くTチャートは上位の層状チャートに移化し、シリカの供給脈をなす。4)1本のTチャートに対応して、ある量(厚さ)の層状チャートが堆積し、厚さ数10mに及ぶ層状チャートは数本のTチャート活動の複合産物である。5)層状チャート中には未固結時のスランプ構造や多様な脱水構造が普遍的に認めれる。6)最古バクテリア化石は層状チャート最上部の明灰色不透明チャートから産する。7)Tチャートおよび層状チャートの希土類元素パタンは強い熱水の関与を示す。考察・結論:1)本地域の緑色岩および層状チャートの多くは太古代海洋中の中央海嶺付近で噴出・堆積したものである。2)層状チャートは海嶺軸部の熱水活動域において急速に堆積し、未固結状態での局部的変形や脱水を被ったものであり、顕生代の遠洋深海起源の層状チャートとは全く異なる熱水起源チャートである。3)地球最古バクテリア化石は太古代の古海嶺軸部の熱水活動域に生息していた。
【研究代表者】