機械学習と物性理論の分野融合的アプローチによる強相関第一原理計算
【研究キーワード】
機械学習 / 人工ニューラルネットワーク / 強相関電子系 / 手法開発 / 量子多体系 / ニューラル・ネットワーク / ボルツマンマシン / 電子格子相互作用 / フラストレート磁性体 / 第一原理計算 / 物質設計
【研究成果の概要】
本研究の目的の一つは、人工ニューラルネットワーク/機械学習と量子多体論を融合した強力かつ汎用的な強相関数値計算手法を開発することである。その新たな手法と密度汎関数理論などの第一原理計算を組みあわせて、実存する強相関電子系へ適用を行い、高精度な定量計算の実現を目指す。そのため、研究の柱は新たな手法開発である。同時に新手法の精度検証も重要な課題になってくる。
今年度は有限温度計算を可能にする新たな人工ニューラルネットワーク手法の開発に成功した。これまでの人工ニューラルネットワーク手法は、絶対零度で最も安定な基底状態に対する手法開発に終始していた。基底状態は物質を冷やして行った時にどのような状態が実現するかを予測する上で非常に大事な状態であるが、実際の実験は有限温度で行われるために、実験と直接比較する量(例えば比熱など)を計算するためには、手法の有限温度への拡張が必須である。また、同時に有限温度計算は熱揺らぎと量子揺らぎの両方とも取り込む必要があるために、計算科学的にも挑戦的課題となっている。
新たな手法においては、純粋化という概念と人工ニューラルネットワーク波動関数を融合し、有限温度計算を可能にした。有限温度における系の混合状態は、アンシラ自由度を加えた拡張した系の純粋状態にマップすることができる(純粋化)。そのマップされた純粋状態を、人工ニューラルネットワークの一つである深層ボルツマンマシンを用いて表現する。この新たな手法を1次元スピン鎖上の横磁場イジング模型と2次元正方格子上のJ1-J2ハイゼンベルグ模型に適用し、手法の精度検証を行った。その結果、小さいサイズの系において、比熱などの物理量の数値的に厳密な結果を非常に良く再現することがわかった。この手法は厳密な手法と違い、計算コストが系のサイズに対して指数的に増大しないので、より大きな系にも適用可能である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)