海溝近傍での海洋プレート変形に伴う水・熱の流動過程とその沈み込み帯への影響の解明
【研究キーワード】
海洋地殻 / アウターライズ / 沈み込み帯 / 流体循環 / 熱輸送 / 断層 / 地殻熱流量 / 間隙水 / プチスポット / 日本海溝 / 太平洋プレート / 海洋プレート / 物質循環
【研究成果の概要】
1.2020年8~9月の白鳳丸KH-20-8航海により、日本海溝及び千島海溝海側の太平洋プレート上で熱流量測定を行った。千島海溝では、2018年に行った測定と合わせて、アウターライズ上の熱流量分布の特徴が明らかになった。日本海溝では、海溝海側斜面に発達する正断層の近傍において、熱流量の空間変動を詳細に調べた。また、正断層の近傍では堆積物試料の採取も行い、間隙水の各種化学分析や同位体組成の測定を実施した。得られたヘリウム・ネオンの同位体組成は、深部からのマントル・マグマ起源物質の供給を示唆するものであった。
2.太平洋プレート内の水分布を反映する比抵抗構造を調べるために、岩手沖日本海溝海側に設置した海底電位磁力計4台を、上記のKH-20-8航海により回収し、約1年間の観測データを得た。宮城沖日本海溝海側における反射法地震探査データを解析し、海溝軸の海側45 km付近で海洋地殻を断ち切る大規模な正断層のイメージングに成功した。
3.2020年10月のよこすかYK20-14S航海により、日本海溝海側において、潜水調査船を用いたプチスポット溶岩流の形態観察、周囲の堆積物への影響の調査を行った。得られた溶岩、火山周囲の堆積物などを分析し、火山活動による海洋プレートの化学変化を調べた。
4.海洋地殻を構成する岩石について、弾性波速度および電気伝導度を、塩水に飽和した状態で測定した。得られたデータを海洋地殻での地震波速度構造や電気伝導度構造と比較し、地殻内でのクラックの形状や分布を推定した。
5.海洋地殻内での間隙水流動の数値モデル計算を進めるため、流れを高速に解くための陽解法アルゴリズムのさらなる高速化を行った。
6.熱流量測定に使用する温度センサプローブについて、プローブ内に計測回路を組み込む新方式の機器を作成し、琵琶湖湖底における測定に使用して良質のデータを得ることができた。
【研究代表者】