燃料電池材料の電子密度分布と核密度分布の温度変化
【研究分野】無機材料・物性
【研究キーワード】
燃料電池 / イオン伝導体 / 中性子回析 / 放射光 / 結晶構造解析 / リートベルト解析 / 最大エントロピー法 / ディスオーダー / 中性子回折 / イオン伝導経路 / 放射光粉末回折 / 電子密度分布
【研究成果の概要】
燃料電池とは化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する電気化学デバイスである。発電効率が高く,有害な排出ガスも殆ど無いため環境問題やエネルギー問題を解決するキーテクノロジーとして期待されている。燃料電池は電解質に用いる材料により分類されるが,電解質に酸化物を用いる固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells,以下SOFCと略す)は高温で動作するため他の燃料電池と比べて電気への変換効率が高く、各国で研究開発が活発に行われている。SOFCの電解質には,高温で酸化物イオン(O^<2->)が高速で伝導する酸化物イオン伝導体を用いる。このような酸化物イオン伝導体では酸化物イオンの位置が局在化しておらず広く分布して伝導すると考えられてきた。したがって,より良いSOFCの電解質の開発と特性の向上には,酸化物イオンの分布や伝導経路を含めた精密な結晶構造の解析が必要である。しかしながら,酸化物イオンの分布と伝導経路に関する既往の研究は不十分であった。その原因は従来の結晶構造モデルでは複雑な分布を正確に調べることができなかったことにあると考えられる。一方、最大エントロピー法(MEM)を用いれば,中性子回折データから核密度(厳密には散乱振幅密度)分布を得ることができる。複雑な核密度分布を調べるには原子変位パラメータの高次項を用いるか、あるいは原子位置をいくつかに分割して分布を表現する分割原子(split-atom)モデルが用いられてきた。一方、MEM解析では対称性を満たす任意の核密度分布を求めることができるという利点がある。したがって、空間群さえ正確に指定すれば、複雑なモデルを考える必要性はあまり無い便利な手法である。そこで酸化ビスマス、セリア、ランタンガリウム酸塩などの燃料電池材料を中性子回折や放射光X線回折により研究した。
【研究代表者】