ルビジウムの分子地球化学:分子レベルの物理化学的普遍性が生む多様な地球惑星科学
【研究キーワード】
ルビジウム / 分子地球化学 / 同位体分析 / XAFS / 同位体比 / 粘土鉱物 / 雲母 / 堆積物 / 海洋堆積物 / 層状珪酸塩 / EXAFS
【研究成果の概要】
分子地球化学の重要な役割の1つに、元素の性質や化学反応特性に基づいて、化学種が変化する反応に着目することで新しい同位体ツールを開発することがある。これまで、ルビジウムイオン(Rb)や他のアルカリ金属イオンは反応性が非常に低いと認識されており、水-岩石相互作用におけるRbの同位体分別に関する研究は殆ど行われていない。しかし、層状珪酸塩との相互作用を考えると、アルカリ金属の反応性は低いとは言えない。 実際に、広域X線吸収微細構造(EXAFS)の分析から、セシウム(Cs)は2:1型層状珪酸塩(バーミキュライト、モンモリロナイト、イライト)に内圏錯体として吸着されることが分かっている。この特異的な吸着構造はCsのイオン半径に起因すると考えられているため、Csとイオン半径が近いRbも同様の層状珪酸塩上で内圏錯体を形成すると予測した。その結果本研究では、層状珪酸塩に対するRbの吸着において、バーミキュライトなどのように内圏錯体を形成する際に、Rb安定同位体比(δ87/85Rb)が分別し、固相側でRb同位体が軽くなることが分かった。一方で、外圏錯体として吸着されるスメクタイトの場合には、同位体分別が生じないことが判明した。さらに各種標準岩石と海水に対してRb同位体比を測定したところ、層状ケイ酸塩が多く含まれる堆積岩において、Rb同位体が海水に対して軽くなることが分かった。一方、陸水(琵琶湖)の堆積物では、火成岩より低い同位体比を示し、これも陸水系での同位体分別を仮定すれば、室内吸着実験から合理的に説明可能である。これらの発見から、Rb同位体比は水-岩石比などにより決定される可能性がある。これらは、吸着構造からの予想される同位体分別が実際の環境中で起こり、それが地球化学ツールとして有効であることを示すことになるため、分子地球化学的研究の典型例として注目される。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山本 順司 | 北海道大学 | 総合博物館 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
板井 啓明 | 東京大学 | 大学院理学系研究科(理学部) | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2019-06-28 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)