三角格子反強磁性体における素励起と相転移の微視的過程の研究
【研究分野】固体物性
【研究キーワード】
三角格子反強磁性体 / ABX_3型結晶 / 相転移 / 臨界現象 / 素励起 / ESR / 中性子散乱 / 磁気測定 / 中性子回折 / 三角格子 / 光学測定 / 三角格子反強磁性展 / 複屈折 / 六方晶ABX_3型結晶
【研究成果の概要】
我々は、ABX_3型化合物を中心に良質単結晶の作成を重点的に行い、得られた結晶を用いて以下のような研究成果が得られた。
1.ABX_3型三角格子反強磁性体のESRを様々な周波数帯のマイクロ波を用いて行い、多くの物質について周波数と共鳴磁場の関係を詳細に調べた。また、共鳴モードの理論的解析も同時に行い、これまでに考慮されていなかった新しい鎖間の相互作用を取り入れると共鳴モードが他の実験結果と矛盾なく説明されることを示した。さらに、新しい鎖間の相互作用を取り入れた場合について、スピン波の分散関係を線型スピン波近似で求めた。
2.RbMnBr_3が220Kで斜方晶構造に相転移することを見いだし、これが原因で磁気構造が不整合構造になることを指摘した。RbVBr_3は変形した三角格子反強磁性体である。この物質の中性子散乱実験を行い、2つの磁気相転移を起こすこと、中間相のスピン構造が部分無秩序構造であることを示した。RbVBr_3はハイゼンベルクスピン系において部分無秩序相をもつ最初の例である。また、この物質の示す臨界現象を中性子散乱と磁化率測定によって調べた。
3.異方性が異なる2つの物質の混晶であるRb_<1-x>K_xNiCl_3の磁性を磁気測定によって調べ、濃度温度相図上で多重臨界点が現れることを示した。
4.いくつかのABX_3型三角格子反強磁性体について、スピン波分散を詳細に調べた。ANiX_3やAVX_3では量子効果が顕著であることが分かった。
5.CsCuCl_3はH//cの場合に量子効果によって磁場中で相転移を起こす。我々は、この物質の低磁場相と高磁場相でのESR共鳴モードを明らかにした。また、高磁場中において中性子散乱実験を行い、理論の予想するスピン構造が実現していることを示した。
【研究代表者】