樹木集団の空間不均一性を簡約化した森林生態系の環境応答モデル
【研究キーワード】
個体間相互作用 / 森林生態系 / 樹木集団動態 / サイズ構造 / 計算簡約化 / 環境変動 / ギャップダイナミクス / 樹木空間配置 / 個体間競争 / 環境応答
【研究成果の概要】
令和3年度も前年度に引き続き現地調査ができなかったため、これまでに作成した空間モーメント近似を取り込んだサイズ構造モデルの妥当性ならびに改良点などを具体的に調べることが困難であった。そこでモデルの拡張方向について検討を行った。
これまでのモデルの独立変数は樹高のみであり、樹高から幹の直径に依存したキャノピーのプロファイルやアロメトリーによる樹高-個体重間の関係式を仮定してモデルを構成している。しかしながら実際の林木動体では樹高と直径(一般に胸高直径として測定される)との関係は時間的に固定された関係ではなく一般に個体間競争や環境変化とともに動態に応じて変化する。これまでの同種のモデルでもそのような樹高と直径とのダイナミックな関係は仮定されていない。そこでYokozawa & Hara (1995)で提案した樹高と直径の2つを独立変数としたサイズ構造モデルをベースとして、本研究で導入した空間モーメントに基づいて個体の空間配位情報を取り込む手法を適用することについて検討を行った。この場合、モデルはサイズ変数2次元と時間変数1次元の偏微分方程式によって記述され、空間モーメントもサイズ変数2次元の関数となる。理論的にはこれまでの1次元の空間モーメント関数の拡張として定式化でき、樹高と直径変数の多項式で表現される交互作用を記述する項が含まれた複雑な表式が得られた。
その結果、樹高-直径関係を時間的に固定した場合に比べて非常に広い個体群のサイズ動態を表現できることが示され今後の発展が期待された。一方で数値計算上のアルゴリズムならびに空間モーメント関数の間の関係(クロージャー問題)について多くの課題が明らかとなった。それらの点については今後の検討課題として、本研究終了後も引き続き関連研究者との協力を得ながら勧めていくことにした。令和4年度は現地調査も含めて従来モデルの妥当性検討を行う。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)