偏光による頭足類の隠れた種内コミュニケーションとその適応的意義
【研究キーワード】
行動生態学 / 性選択 / コミュニケーション / 頭足類 / 偏光
【研究成果の概要】
性淘汰において、配偶相手の質や繁殖ステイタスを表す情報は非常に重要であるが、これまでの知見は、色や大きさなど、人間が認識できる視覚情報に限られている。頭足類の種内コミュニケーションには視覚情報が重要と考えられており、近年偏光を識別できることや、体表面に特徴的な偏光模様を持つことが明らかとなってきた。そこで本研究は、頭足類を用いて、交尾前・交尾後の性淘汰過程における偏光利用とその適応的意義を世界で初めて明らかにすることを目的とし、1) 交尾前性淘汰が重要と考えられるエゾハリイカを用いて、雄の性的二型形質の偏光特性は求愛成功に影響しているか、2) 交尾後性淘汰が重要と考えられるヒメイカを用いて、雌の交尾経験を示す偏光特性は、雄の配偶者選択や精子配分戦略に影響しているか、を明らかにする。具体的には、1-1) 偏光特性の性的二型と繁殖行動との関係、1-2) 雌の偏光認識能力、1-3) 求愛時に使うイカ墨の視覚的効果、また2-1) 貯精嚢が示す偏光の測定と偏光反射メカニズム、2-2) 雌の交接経験と雄の配偶者選択、2-3) 雌の交接経験と雄の精子配分戦略について検証する。
2021年度には、1-1)エゾハリイカの求愛行動を、偏光カメラを用いて観察した結果、求愛ディスプレイの際に特異的に雄の第二腕が強い偏光を反射すること、1-2) エゾハリイカの網膜は変更を識別できる視細胞配列を有すること、1-3) 求愛の際に用いるイカ墨は周囲の明度を下げ雄の体色とのコントラストを高める効果があるが偏光特性には影響しないことが明らかとなった。また、2-1) ヒメイカ雌の貯精嚢は、精子を貯蔵しているときのみ光を反射することが明らかとなった。また2-2) 雄が雌の交接ステイタスを視覚的に認知し配偶相手を選択するかに関する行動実験を行った。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
佐藤 成祥 | 東海大学 | 海洋学部 | 特任講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2024-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)