顕生代層状チャートの放散虫化石の化学組成から解読する海嶺熱水活動の経年変動
【研究分野】岩石・鉱物・鉱床学
【研究キーワード】
放散虫化石 / 層状チャート / 顕生代 / 希士類元素 / 海嶺熱水活動 / 海洋環境 / 経年変動 / 希土類元素 / Eu異常
【研究成果の概要】
現在の海洋の化学組成は,おもに大陸から流入する河川および風成塵と海嶺からの熱水によるインプットと,河口域や海嶺域における懸濁物質の生成・沈殿,遠洋域における自成鉱物や生物源物質の沈殿などのアウトプットによりコントロールされており,海嶺熱水活動の変動は地球表層環境の変動に多大な影響を与えていると予想きれる.顕生代の層状チャートの放散虫化石の希土類元素(REE)組成(特にEu異常)がこの変動を解く鍵の一つになり得ると考えた.海水のEu異常は,海洋に注がれる河川水に対する海嶺熱水活動の相対的な増減に支配されている(Elderfield,1988)ので,放散虫が海水からREEを取り込んで,海水のEu異常をそのまま反映していれば,海嶺熱水の活動度をモニターすることができる.層状チャートは大陸縁辺域の局所的な影響を受けずに遠洋海域で堆積し,グローバルな海洋環境を反映しているが.層状チャート(全岩)そのもののREE組成は多くの場合,少量含よれる陸源砕屑物に妨害されるために,海洋環境の復元には直接的には使えない場合が多い.陸源砕屑物などの妨害物質をフッ化水素酸処理により除外した.放散虫化石試料そのものがより重要と考えた.愛知県犬山市栗栖地域から三畳紀後期〜ジュラ紀前期の層状チャートのセクション(層厚30m,854層)を完全連続的に採取した.そのうち86層から放散虫化石を抽出し,ICP-MSによりそのREE組成を得た.また44層については比較のために,チャートの全岩分析も行った.以下の結果が得られた.
(1)全岩化学組成はほぼ一様のREE組成を示し,明確な経年変動は示さない.これはREEsのかなりの部分が陸源砕屑物由来であることに起因する.
(2)放散虫化石のEu異常は有意な変動を示す.そのpositive spikeから,三畳紀後期〜ジュラ紀前期にかけて熱水活動が激しい時期が8〜9回存在した,最も激しい時期には,現在よりも相対的に10〜20倍程度活発であったと推察される.
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)