南海トラフのDBSRを手がかりとしたガスハイドレートの不安定性に関する研究
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
南海トラフ / DBSR / ODP Leg204 / カスカディア収束帯 / 黒島海丘 / メタン湧水 / 炭酸塩ノジュール / ドロマイト / ガスハイドレート / 塩分濃度 / 酸素同位体組成 / 永久凍士 / 塩素濃度 / 水素同位体組成 / ヨウ素
【研究成果の概要】
(1)東京大学海洋研究所などにより、東海沖の南海トラフ(第1天龍海山)で、8km連続する二重のガスハイドレートBSR(DBSR)が発見されている。本研究では、石油公団が東海沖で行った高精度の地震探査プロファイルを再検討し、DBSRが、従来考えられているより遙かに広い範囲に分布していることを明らかにした。石油公団では2002年度に3D地震探査を行い、本研究で指摘したDBSR領域を追認した。DBSRがこのように広い範囲に認められることは、その起源が局地的な現象ではなく、南海トラフに広域的に影響する現象で在ることを意味する。
(2)DBSRが発達しかつ海底からメタンガスが湧出する南海トラフで潜航調査を行った。調査期間中にはメタンの湧出は見られず、顕著な湧水関連現象も発見出来なかった。一方、DBSR分布域の延長上の石花海堆でたまたま底網で回収された炭酸塩ノジュールを分析した結果、(1)かつて活発なメタン湧水があった事、(2)メタンフラックスの強化はガスハイドレートの分解に因る事が分かった。
(3)活発なメタン湧水と化学合成生物群集が観察される石垣島沖黒島海丘で2回の潜水航海を行なった。ここではシンカイヒバリガイ、シロウリガイなどの大きな群集の中に活発にメタンガスバブルを放出する湧水孔および様々な形態の炭酸塩ノジュールを発見、多数の試料を回収/分析した。(1)チムニー状の炭酸塩ノジュールはいずれもドロマイトから成ること、(2)炭素同位体組成が著しく小さくメタンの影響が大きい事、(3)酸素同位体組成はその場の海水温度から予測される価より有意に大きい事が分かった。
(4)DBSRが確認されているカナダ、バンクーバー沖カスカディア収束帯の掘削調査(ODP Leg204)に参加し、船上およびラボでの分析により、メタン湧水が活発な海底付近で、(1)塩素濃度の正異常発見、(2)熱分解起源炭化水素ガスの同定、(3)メタンフラックスと硫酸濃度減少パターンの相関を明らかにした。
【研究代表者】