グローバルな短周期地震波の有限要素法直接シミュレーション
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
有限要素法 / 地震波 / 弾性波-音波散乱 / 固体-液体境界 / 不規則地形 / 表面波
【研究成果の概要】
圧力-変位混合型有限要素法プログラム
本計画では弾性波(固体)-音波(流体)散乱問題を効率よく扱うために,これまでの我々の研究をもとにした圧力・変位ハイブリッド有限要素法を採用した.すなわち,固体側の要素は変位を,流体側の要素は圧力を変数として持つ.また弾性波-音波境界条件は要素境界で厳密に満足される.複素弾性定数の形で減衰性も導入した.
本研究ではこれらの特徴を採り入れた2次元有限要素法プログラムを開発し検証を行なった.減衰については解析解と比較し結果の妥当性を検証した.減衰の効果を利用して吸収境界帯(無反射境界帯)を設定できることや,不規則地形・流体inclusionなどを含むような複雑な構造モデルに対しても容易に地震波波形合成ができることなども示した.なお,3次元の場合については弾性体用プログラムを作成するにとどまった.
並列計算の実装
本研究では,剛性行列からなる複素数の大規模疎連立一次方程式を解く必要がある.様々な可能性を探った結果,疎連立一次方程式を解くための反復法自体を独自に並列化することとした.反復法アルゴリズムとしては共役勾配法系統のなかでも高速・高安定とされるGP-BiCGを採用し,MPIを用いて分散並列計算を行なうプログラムを独自開発した.この方法では計算に必要な記憶領域も分散されるので,ノードあたりの記憶容量を超える大規模な計算が可能となる.この並列化により,小規模なPCクラスタ(10CPU)を用いて,約300万自由度の複素疎連立一次方程式を800秒から1000秒程度の時間で充分な精度で解くことが可能となった.
このように,地球深部を通るPdiff(コアでの回折波)などを波形合成する手法を整えることができたが,開発に予想以上の時間を要し,実際の波形合成やデータとの比較は今後の課題とした.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】3,600千円 (直接経費: 3,600千円)