中国鮮水河断層における地震活動数値モデルの構築
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
鮮水河断層 / GPS / すべり速度 / 摩擦 / 岩石実験 / シミュレーション / 地震活動
【研究成果の概要】
(1)テクトニックモデルの構築
中国大陸の変形様式をGPS観測データから明らかにする試みを行った.鮮水河断層帯を含む中国大陸をいくつかの主要ブロックで区切り,それらの剛体的変位,断層すべり遅れ,及びブロックの内部変形の重ね合わせでGPS変位速度場をモデル化した.この結果,鮮水河断層帯で東側を区切る四川-雲南ブロックが,インド大陸の衝突の影響によって引き起こされる,時計回りの剛体的回転成分は7.0-9.5mm/yrと推定され,地質学的なすべり速度9mm/yrと調和的であることがわかった.また,鮮水河断層帯上のすべり遅れ分布を推定したが,その値は剛体変位成分よりはかなり小さく,GPS観測期間の最近数年間では断層がほぼ固着していると推定された.
(2)岩石実験
固着したジョイントをもつ岩石を3軸圧縮して,破壊に伴う微小破壊音(AE)を測定した.ジョイントがない岩石では,応力が比較的低い段階では,AEの震源はばらつきフラクタル次元が大きい.ジョイントがある岩石では,応力が低い段階からAE震源はジョイントに沿って集中し,とくにジョイントが曲がった場所にAEのクラスターができた.
(3)数値シミュレーション
断層面にはたらく摩擦がすべり速度・状態依存摩擦則に従うと仮定し,断層の平均的すべり速度としてGPS観測や地質調査から推定される値を用いて,鮮水河断層の地震活動モデルを構築した.モデルパラメターを適切に選ぶことにより,数百年間隔で断層の活動期が繰り返すシミュレーション結果が得られた.断層の分岐や曲がりが存在する領域や摩擦特性がすべり速度強化の領域で,破壊の一時停止が見られた.一時停止した破壊は,しばしば数年以内に破壊伝播をはじめた.これは,すべり速度強化域で非地震的な破壊がゆっくりと伝播したためである.これは,地震活動が断層に沿って移動する現象を説明する.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
加藤 照之 | 東京大学 | 地震研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
雷 興林 | 産業技術総合研究所 | 地球科学情報研究部門 | 主任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】7,200千円 (直接経費: 7,200千円)