乱れた2次元超伝導体における量子ゆらぎと異常な絶縁体相
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
超伝導絶縁体転移 / 薄膜 / ボ-ズグラス相 / ボルテックスグラス転移 / 量子ゆらぎ / ホール効果 / 交流インピーダンス / 磁気抵抗 / バイブレ-ティング・リ-ド法
【研究成果の概要】
よく制御された次元性と乱れをもつ2種類の従来型の超伝導体を用いて、その電子状態および磁束状態を、量子ゆらぎの効果が現われる極低温・高磁場域までの広い領域にわたって調べた。
In微粒子薄膜では、電気抵抗から求めた臨界磁場B_<xxC>とホール抵抗から求めた臨界磁場B_<xyC>は異なり、乱れの度合い及び2次元性が強いほど領域B_<xyC><B<B_<xyC>が拡がる傾向が認められた。さらに、より一様な乱れをもつアモルファスMo_xSi_<1-x>超薄膜の乱れ、及び磁場印加に伴う超伝導絶縁体転移を調べたところ、絶縁体試料では磁気抵抗は常に正であるのに対し、超伝導体試料では100mK以下の極低温でのみ、臨界磁場B_<xxC>以上でク-パ-対の存在を示唆する負の磁気抵抗が観測された。これらの実験結果は、2つの系で見い出された臨界磁場以上における異常な絶縁体領域が、2次元の激しい量子ゆらぎによって出現すると予想されているボ-ズグラス相である可能性を示唆している。
一方、厚いIn微粒子膜では、系の次元性、平均粒径、そして測定する電流密度の大きさをある適当な条件に保てば、ボルテックスグラス(VG)転移モデルで予想される特徴的なI-V特性が観測されることを見い出した。さらに、4端子法、及び微小ドライブ・ピックアップコイル系を用いた相互インダクタンス法によって、10MHzまでの交流インピーダンスを測定した結果、位相から相転移点が明確に決まり、相転移温度近くでは振幅および位相の温度および磁場依存性が、スケーリング理論で予想される特徴的な関数形に乗ることがわかった。これらの結果は、VG転移が酸化物高温超伝導体に限らない乱れた第2種超伝導体に普遍的な、2次の相転移現象であることを示している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】7,800千円 (直接経費: 7,800千円)