熊本地震はなぜ阿蘇カルデラ内で止まったのか?:測地観測と数値計算で探る破壊の終焉
【研究キーワード】
熊本地震 / 阿蘇カルデラ / 断層破壊 / 測地観測 / 数値計算
【研究成果の概要】
本研究は、内陸地震の断層破壊が火山体内部に進展した様子を捉えた熊本地震を足がかりに、地殻内構造の不均質が断層滑りの終焉にどのように関わっているのかを理解することを目的に、SAR衛星画像による地殻変動解析、重力データ解析による地下構造推定及び動的破壊の数値シミュレーションを行うものである。本年度は、令和2年度に実施した阿蘇カルデラ内の内部構造のインバージョン解析及び初年度に実施したSARによる地殻変動解析の高度化を行い、断層運動と密度構造の位置関係を精査した。
重力データの解析では、火山の地殻内密度が一般的な値より低いことを考慮し、令和2年度で使用した一般的な地形密度より小さい値を初期密度として与える等して再計算した。その結果、カルデラ西縁部の深さ1kmから3kmに分布する低密度領域の3次元空間分布の詳細を取得することができた。地殻変動解析では、従来の解析で用いた標準的なInSAR法とピクセルオフセット法に加えて、レンジ及びアジマス成分の周波数を帯域分割して干渉処理するSBI手法を適用した。これにより阿蘇カルデラ内を含めた大規模変動域の変位をより詳細に獲得できた。布田川断層から東進してきた断層運動が、阿蘇カルデラ西縁部において主に2つの断層系に分岐して滑りを終える様子が詳細に捉えられた。予備的に解析した震源断層モデル解析からは、断層面上のすべりが低密度域に侵入する付近で減衰することが捉えられた。低密度領域は、先行研究で知られている低S波速度や低比抵抗の領域と重なっており、火山性流体を含む熱水系が発達していることが示唆される。温度が高い地殻内環境にあることが推察されることから、西から進展してきた断層破壊が、脆性破壊の能力を失うこの領域に到達したことで、東への進行を止めた可能性が考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)