地球電磁気学的手法による過去のプレート境界の深部構造 -日高・神居古潭帯-
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
マグネトテルリック観測 / プレート境界 / 日高・神居古潭帯 / 比抵抗構造 / クラプレート / マグネトテルリックス / 変成帯 / 下部地穀 / プレ-ト
【研究成果の概要】
過去のプレート境界の地下構造を求める目的で、日高・神居古潭変成帯南部域(日高測線)、同北部域(士別測線)、士別測線の東への延長域(留辺蘂測線)で広帯域マグネトテルリック観測を行った。測線はいずれも変成帯をほぼ直角に横切る東西測線上で行われた。
1.日高測線:地殻浅部の比抵抗構造は良く表面地質と対応している。すなわち測線西側の空知・エゾ帯は低比抵抗(数10Ωm)であるのに対し、東側の日高帯は数1000Ωmと高比抵抗である。又空知、エゾ帯を抜いて貫入している蛇紋岩体は数Ωmと極めて低比抵抗であり、その厚さは数kmしかない。空知・エゾ帯の厚さは10kmにも及び、士別測線の3km程度と比べて極めて厚い。日高・神居古潭南部域では、北海道と千島弧の衝突により、壮大なforedeepが形成されたことの証拠であると思われる。この空知・エゾ帯の下には、ジュラ紀の海洋プレートの残りが高比抵抗基盤として分布していることがわかった。更に日高・神居古潭帯浅部から東落ちの顕著な低比抵抗層が確認されたが、同様に斜めに沈み込む地震波低速度層と位置的対応が良い。この層は現在の太平洋プレートの沈み込み走向と全く異っており、過去のテクトニック運動により形成されたものと推定される。
2.士別測線:空知・エゾ帯は低比抵抗、日高帯は高比抵抗であるので、浅部地殻構造は大略日高測線と変りはない。しかし下部には西落ちの良導層が分布しており、日高測線との差異を示す。この良導層は、クラプレート上面の海洋性堆積物と解釈できるが、現地点では断言するに至っていない。
3.留辺蘂測線:地殻の比抵抗構造は浅部、深部とも極めて複雑であるが、クラプレートに起因すると思われる高比抵抗基盤が東落ちに分布しており、その上位に前弧海盆堆積物(湧別層群)や海山付加体(仁頃層群)が乗っていると解釈できる構造が求められた。
【研究代表者】