地殻内比抵抗変化自動測定システムの開発
【研究分野】固体地球物理学
【研究キーワード】
電気比抵抗 / 直流電流送信 / 電気探査 / 接地抵抗 / パソコン制御 / 火山
【研究成果の概要】
今年度は,昨年度に試作した直流送信装置を試験運転し,得られたデータの評価を行った。まず,大地の接地抵抗をエミュレートできるような抵抗アレイを製作した。最大で250V,5Aの出力がかかるので,電流送信時の大きな発熱量に耐えられるように300W,15Ωのホーロー抵抗5本を組み合せ,3〜75Ωの範囲の抵抗値で実験した。その結果,45Ωの抵抗値までは最大出力の5Aの電流を流すことができたが,それより抵抗値が大きい場合は流れる電流値が減り,75Ωの抵抗値では3A強の電流値までしか流すことができない,という期待通りの振る舞いが得られた。送信チャンネルの自動切替えや,一日程度の連続運転も問題なく行えた。
昨年度に準備した,送受信電極および送信用ケーブルを用いて,実際の大地にも電流を流してみた。電極はシュランベルジャ法配置にし,電位差データの記録には,現有のデータロガーを用いた。送信ダイポールは,300mおよび100mの二側線を自動で切り替えて用いた。桜島の表層を覆う溶岩のため,接地抵抗が200〜500Ω程度と大きく,最大でも約1Aの電流値しか流せなかった。得られたデータは,数百回のスタッキングにより電位差が読み取れるまでS/Nが改善されたが,ゆらぎが大きく,信号強度を大幅に改善しなければ,精度の良い時間変化の検出は望めないと思われる。大羽(1998)の見積りによれば,10A×1kmの電流モーメントを送信したとしても,桜島の火山爆発で期待される比抵抗変化は検出限界程度の大きさででしかないからである。火山地域で運用することを考えれば,本研究で開発した装置の,商用電源からパワーを得る仕様は不利であることを痛感した。例えば,12Vのカーバッテリを8〜10個直列に接続すれば,100VのDC入力電圧が得られるので,そのように入力部の仕様を変更すれば,山頂付近でも電源の問題は解決できる。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)