稠密地震観測データ解析と地震活動モデル構築による前震の意義の理解
【研究キーワード】
前震活動 / 機械学習 / 地震活動 / 深層学習 / 震源カタログ構築
【研究成果の概要】
本研究の目的は,独自の稠密観測データから小さな地震を徹底的に探索して超高品質の地震カタログを作成し,大地震発生前に見られる前震活動が本質的な意味での前兆かを,現実の複雑性を適切に反映した地震活動モデルで検証することである.本年度は,高効率・高精度の地震カタログを作成する手法の開発を目指し,イベント検出・走時検測・P波初動極性読み取り・震源決定などにおいて深層学習の利用を試みた.構築した手法を利用し,長野県西部・山陰・近畿地方に展開している稠密地震観測網および周辺の定常観測点のデータを統合処理して,広域にわたる多点のイベント波形データセットおよび自動震源・読み取りデータセットを構築した.また,室内水圧破砕実験で得られたAEデータに深層学習によるP波初動極性読み取りを行い,10供試体の実験,5万個ほどのAEイベントのモーメントテンソル解を評価し,結果を出版した.連続波形の中から地震による類似波形を自動検出する手法の改良も試み,波形相関法を従来より1万倍程度高速化することにも成功した.同手法により1ヶ月程度の連続波形であれば相関係数を計算可能であることを示した.
中規模の地震活動がETASによる予想に比べ明瞭に静穏化した事例が1970年代から多く報告されている.この傾向が有意なものかを検証するため,客観的ルールを設定して成績を評価したところ,ルールのパラメタを調節すると偶然では説明しがたい良い成績が得られた.ただし,パラメタの調整において過学習が起きている可能性を考慮し,学習と成績評価に使うデータ期間を別期間にするクロスバリデーションを試みたところ,サンプル数が少なく,明瞭な結論は得られなかった.しかしながら,本手続きは一般性があり,静穏化に限らず前震等さまざまな現象の先行性評価に用いることができる.
【研究代表者】