離散パンルヴェ方程式の幾何学的理論の拡張へ -- 特異点、エントロピーと可積分性
【研究キーワード】
遅延型微分方程式 / 関数方程式 / 離散可積分系 / エントロピー / 特異点
【研究成果の概要】
「特異点」 というものは19世紀以来の物理学と数学の研究においてもっとも大きな役割を果たしてきた数学的概念である. 近年, 自然現象を記述する微分方程式の特異点の構造に基づき,その物理的現象の分析を厳密に行うことが可能となる方程式が増えてきたものの, 数理モデルによく用いられる「遅延型微分方程式」の特異点構造についてはほとんどわかっておらず, そういった方程式の特異点と解との関係はまだ知られていない.本研究では,遅延型微分方程式の特異点構造を解析するために新しい幾何学的理論を開発すること,及びその幾何学的理論に基づき, 遅延型微分方程式の解の特徴を研究することが主な目的である.
また,一世紀間以上の研究のおかげで,常微分方程式や偏微分方程式, 並びに常差分方程式などの多くの数理モデルに対しては,モデルの「可積分性」がその方程式の特異点の性質に基づいて定義されるようになったものの,非線形偏差分方程式やそれと密接な関係にある関数方程式や遅延方微分方程式などに対しては,そのタイプの方程式における可積分性の決定的な特徴は未だに知られていない. 遅延型微分方程式などにも適用できる忠実な可積分性指標の開発はもう一つの重要な目的である.
前者の研究目的については,初年度の2021年度には,A.Stokesが2020年に遅延型常微分方程式の特異点構造を解析するために提唱した数学的手法を用いて,いくつかの方程式の解析を開始し,方程式の一般解の複雑性を測る数学的指標を考案し始めた.また,後者の目標に関しては,2次元の写像の可積分性を判定するために導入された数学的道具の高次元の写像への拡張を研究し始めた.
【研究代表者】
【研究種目】特別研究員奨励費
【研究期間】2021-11-18 - 2024-03-31
【配分額】1,400千円 (直接経費: 1,400千円)