陽電子消滅法とESR法を組み合わせた表面常磁性中心の研究
【研究分野】物理学一般
【研究キーワード】
陽電子消滅 / ESR / 表面 / 常磁性中心 / 紫外光照射 / 不多電子 / ポジトロニウム / スピン交換反応 / 不対電子
【研究成果の概要】
本科研費の初年度(平成10年度)に作成した試料の紫外光照射が可能なクライオスタットを用い、酸化物微粒子を低温に冷却した状態で低圧水銀灯からの254nmの波長の光を試料に照射し、ポジトロニウムの平均寿命を調べた。その結果、200℃で熱処理をしたシリカエアロゲルとアルミナ超微粒子に於いて、ポジトロニウムの平均寿命が大きく減少することを見出した。これは紫外光による表面常磁性中心の生成と、ポジトロニウムとそれとのスピン交換反応を表している。一方、シリカ超微粒子(Cab-O-Sil)と、800℃で熱処理をしたシリカエアロゲルでは、長時間紫外光照射を行っても全くポジトロニウムの寿命が変化せず、表面常磁性中心が生成されないことがわかった。
同じ紫外線光源を用い、低温照射下のESR測定を行ったところ、200℃で熱処理をしたシリカエアロゲルにおいてポジトロニウムとスピン交換をするラジカルは-OCH_2であることがわかった。ESR測定と陽電子寿命測定の際の照射強度を同じにして、ESR測定から-OCH_2ラジカルの濃度を求め、陽電子寿命測定からポジトロニウムのスピン交換の速度を求めた。この2つの結果を組み合わせて、ポジトロニウムと-OCH_2ラジカルのスピン交換反応の断面積を推定した。結果は、3(+6,-2)×10^<-21>[m^2]であった。
以上の結果より、ポジトロニウムは表面の常磁性中心に敏感であり、そのプローブとして有用であることがわかった。ポジトロニウムを用いたスピン検出法の感度を、得られた断面積から導いたところ、検出限界は10^<15>spin/cm^3程度となり、SQUID帯磁率計と同程度であることがわかった。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)