高分子電解質ゲルの体積相転移に関する分子論的研究
【研究分野】高分子構造物性(含繊維)
【研究キーワード】
高分子電解質ゲル / 電荷分布 / 膨潤力 / 静電斥力 / 疎水性相互作用 / 水素結合 / Floryモデル / Katchalskyモデル / 体積相転移 / Flory-Huggins理論 / 分子間相互作用 / クーロン斥力 / クーロン引力 / クローン斥力 / クローン引力
【研究成果の概要】
本研究の目的は、"ゲルの体積相転移は架橋高分子鎖間の斥力と引力のバランスが崩れた場合に起こる"と言う仮想的バランスモデル(F.Ilmain, T.Tanaka, E.Kokufuta, Nature,349,400-401(1991))を用いて高分子電解質ゲルの体積相転移が理解できることを実験的に実証することにある。このモデルでは、斥力と同符号電荷間のクーロン反発を考え、それにバランスする引力として疎水性相互作用、水素結合、van der Waals力および異符号電荷間のクーロン力を仮想している。そこで、本研究では、高分子電解質ゲルの膨潤に及ぼす固定イオンの分布効果に注目した。実験には、通常のバルクゲルからナノゲル微粒子まで広い範囲のゲル試料を供試した。高分子ゲル中の固定イオンの分布は、イオン性界面活性剤の吸着、ポリイオンの包括および酵素化学的なpH勾配形成の3通りの方法で形成させた。その結果、高分子網目に固定された正電荷または負電荷の斥力が疎水性相互作用や水素結合の引力に打ち勝ちゲルが膨潤する過程で、電荷の不均一性は重要な役割を果たすことが明らかになった。さらに、この事実は、ゲル相内の対イオンによる浸透圧で高分子電解質ゲルが膨潤すると考えるFloryモデルでは説明ができないことが明確になった。以上の結論は、我々が以前から研究を続けてきた生物化学反応のエネルギーを力学エネルギーに変換できる高分子ゲル系、すなわちバイオケモメカニカルシステムの構築に応用した。また、粒子径が数十から数百ナノメートルの大きさを有するゲル微粒子(高分子ナノ架橋体)の合成にも発展させた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
吉田 亮 | 筑波大学 | 応用生物化学系 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1999 - 2002
【配分額】33,300千円 (直接経費: 31,200千円、間接経費: 2,100千円)