keV中性子を用いた元素合成の研究
【研究分野】核・宇宙線・素粒子
【研究キーワード】
恒星 / 元素合成 / 中性子 / 反応断面積 / 螢光感応型 / ドリフトチャンバー / p波中性子捕獲 / シミュレーション / P波中性子捕獲 / S過程元素合成 / 中性子捕獲 / データ収集計算機 / 中性子散乱 / モンテカルロコード
【研究成果の概要】
恒星中での元素合成を考察する上で星の温度に対応する10〜250keVの中性子エネルギーにおける^<14>N(n,p)^<14>C反応断面積を測定することは極めて重要である。そこで我々は窒素ガス中で作動できる新型の蛍光感応型ドリフトチャンバーを製作した。そしてアルファ線源を用いたオフラインでのテスト(エネルギー及び時間分解能、検出効率等)では期待通りの性能をもつことを明らかにした。その後のオンラインテストでは、平均中性子エネルギー40keVで1.3ミリバーンの反応断面積を得ることに成功した。更に統計精度を上げた実験が必要ではあるが、上記結果は鉄欠乏型の大質量星ではN(窒素)が重元素を合成するための中性子を吸収する可能性が高いことを示唆しており、元素合成機構を考える上で重要な結果である。
また^<12>C(n,γ)^<13>C反応断面積測定の解析を終了した。その結果中性子エネルギーが10〜250keVの範囲で精度の高い値が初めて得られた。この結果鉄欠乏型の大質量星では、炭素が中性子反応抑止剤として作用することが明らかになり、恒星中での重元素合成のシナリオに大きな影響を与えるものと考えられる。ところでこの反応では、中性子エネルギーが大きくなると断面積も大きくなることが初めて示されたが、これはp波中性子捕獲の寄与であることが、そのエネルギー依存性及び捕獲状態からのγ線分岐比から結論された。
一方中性子捕獲実験では多量の試料が使われるので試料中での中性子エネルギーの減少を正しく評価する必要がある。このためモンテカルロシミュレーションプログラムを作成した。このプログラムの妥当性は、厚さの異なるパラフィン試料を用い、H(n、γ)D反応断面積を測定、解析することにより検証された。
【研究代表者】