ヘリウム薄膜における量子弾性効果と超固体現象の解明
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
物性物理 / 低温物性 / ヘリウム / 超流動 / 弾性 / 量子相転移 / グラファイト / 窒化ホウ素 / ヘリウム薄膜 / 水素 / 超固体 / グラフェン / 薄膜
【研究成果の概要】
2次元量子多体系であるグラファイト(Gr)表面上ヘリウム(4He)薄膜の弾性率が低温で増大する「弾性異常」を発見し、更に吸着第2層で超流動と剛性が共存することを示唆する結果を得た。弾性異常の存在から、Gr上He薄膜が他He薄膜と同様に、局在状態と空間的に拡がった励起状態を有し、吸着量の増加による超流動の発現は局在状態と拡がった状態間の「量子相転移」と解釈できることを明らかにした。これはヘリウム薄膜の諸性質が「量子相転移」描像で普遍的に理解できることを示す重要な成果である。また六方晶窒化ホウ素(hBN)表面上4He薄膜の弾性と超流動性がGr上薄膜と定性的に同様の挙動を示すことも明らかにした。
【研究の社会的意義】
グラファイト(Gr)上ヘリウム(He)薄膜は最も古くから知られる2次元系であるが、近年の2次元系研究潮流の中で改めて注目されている。特に超流動固体や量子スピン液体などの新奇量子相の発現が期待される。本研究は弾性測定によりHe薄膜のエネルギー構造を解明するというユニークなアプローチで、局在状態と拡がった状態間の量子相転移描像が他のHe薄膜同様に成り立つことを明らかにした。また超流動性と剛性の共存を示唆する結果を得ており、超流動固体や量子液晶の新しい例として学術的重要性は高い。さらに六方晶窒化ホウ素表面上He薄膜の実験を初めて行い、新しい2次元量子多体系を開拓しつつある。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2017-04-01 - 2020-03-31
【配分額】19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)