静的歪み構造を利用したスピン流生成機構の微視的解析
【研究キーワード】
スピントロニクス / スピンダイナミクス / スピン起電力 / 表面弾性波 / スピン流 / 格子歪み
【研究成果の概要】
本研究では、物体の静的な歪みとスピンの結合を利用したスピン流生成機構の理論的な解明を目指している。その前段階として、表面弾性波に伴う動的な格子歪みを利用したスピン起電力について解析を行った。
モデルとして、外部磁場が印加されている強磁性金属へ表面弾性波が注入されている場合を考える。この時、表面弾性波に伴う格子の回転変形(反対称歪み)と伝導電子スピンはスピン・渦度結合により結合することが知られている。また同時に、格子の歪み変形(対称歪み)と局在磁化は磁気弾性結合を通して結合する。この二つの効果が伝導電子スピンと局在磁化の結合であるs-d交換相互作用によって組み合わさることで、表面弾性波の進行方向および深さ方向へ直流および交流起電力が生じることを見出した。さらに、本研究で提案するスピン起電力(スピン弾性起電力と呼ぶ)には表面弾性波の伝搬方向と外部磁場の印加方向について特徴的な非相反性が現れることが分かった。また、磁気弾性効果の強いニッケルを強磁性金属として用いる場合に発生する起電力の大きさを見積もったところ、数十nV程度の実験で観測可能な程度の起電力が発生することが分かった。本研究におけるスピン起電力は、表面弾性波デバイスさえ用意すれば、強磁性金属単膜という貴金属を必要としないシンプルなデバイス構造において実現するため、新奇の表面弾性波デバイスとしての応用が期待される。この研究成果はPhysical Review Letters誌に掲載された。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2021-08-30 - 2023-03-31
【配分額】2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)