ハミルトン系におけるエルゴード特性の微細構造
【研究分野】物性一般(含基礎論)
【研究キーワード】
ハミルトン力学系 / カオス / KAM / 不変トーラス / クラスター化 / ワイブル分布 / 量子カオス / レベル統計 / 近可積分系 / クラスター / ベリー・ロブニック公式 / 三体問題 / KAMトーラス / ノン・ツイスト系 / ア-ノルド拡散 / 分岐現象 / ノン・ツイスト写像
【研究成果の概要】
本研究では、ハミルトン力学系の相空間に潜む未知の精密微細構造の発見に取り組み、軌道のエルゴード論的・運動論的複雑さのもつ普遍的法則の解明を目標とした。研究対象は、古典系から量子系まで、また少数自由度系から多自由度系にまで及んだ。運動論的法則の探求においては、多粒子系のクラスター化、緩和現象及び異常拡散現象などの理解の基礎となる力学的描像を理論化することに挑戦した。さらにハミルトン系研究の理論的手法が適用できる具体的実験系であるレーザー発振の光学系の解析も並行して進め、本研究の基礎的成果が技術・工学の分野にまでも拡大・適用できる可能性を追及した。具体的には、以下の成果をあげることができた:
(1)トーラス・カオス共存系のフラクタル構造と臨界現象の解明
トーラス崩壊現象において、トーラス-カオスの転移点が真性特異点として普遍的な臨界現象を伴うことを、理論および数値シミュレーションで明らかにした。これらの成果を基礎に非双曲系の統計則を決定し、Weibull分布とLog-Weibull分布という、高次元系特有のアーノルド拡散と一致するスケール則を生み出すことを明らかにした。
(2)KAM条件の破れに伴う普遍則の解明
KAM条件を破るハミルトン系において、相空間構造を系統的に調べる新しい手法を提案し、リコネクション現象やシアーレストーラスの構造の精密な解析に成功した。また、大域的カオス発生の臨界点をパラメータ空間全域において決定し、臨界点の集合がフラクタルになることを明らかにした。
(3)微細構造の生み出す量子カオス効果の解明
非可積分ビリヤード系の量子レベル統計におけるベリー・ロブニックパラメータの決定法を新たに提案し、それによって最近接レベル間隔分布関数が、半古典領域ではほぼ完全に決定できることを示した。古典系の分岐現象に伴う微細構造変化が、量子レベル統計の変化に直接反映することを解明した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮坂 朋宏 | ATR環境適応通信研究所 | 第四研究室 | 研究員 | (Kakenデータベース) |
原山 卓久 | ATR環境適応通信研究所 | 第四研究室 | 研究員 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 2000
【配分額】3,200千円 (直接経費: 3,200千円)