マルチポロニクスの第一原理物質設計
【研究キーワード】
反強磁性体 / 磁気構造予測 / 第一原理計算 / 物質設計
【研究成果の概要】
(1) 結晶構造の情報を使った磁気構造予測については、これまで、磁気構造の発生に伴ってユニットセルが大きくならない場合に注目してきた。この方法は今年度、パイロクロア酸化物のうち、磁気構造が実験的によく理解されていなかった物質や遷移金属をインタカレートした遷移金属ダイカルコゲナイドなどに適用され、実験結果の解釈に大きく貢献した。一方、従来の方法を拡張し、磁気構造の発生に伴ってユニットセルが大きくなるケースも取り扱えるようにする試みにも取り組んだ。データベース作成に関しては、数千種類の磁性体のうち、磁気転移温度の高いものを約300種類取り出し、これらに対して磁気構造予測の自動計算を開始した。今年度は磁気構造の発生に伴ってユニットセルがかわらない磁気構造のみに注目することとした。準安定状態の中には寿命が十分長く、興味深い物性を示す磁気構造がありうるので、エネルギーが十分低い磁気構造はすべてリストすることとし、異常横伝導を示すなど、応用の可能性のある物質のカタログの作成に着手している。
(2) 応答関数の計算については、スキルミオンなど、実空間のサイズが大きな磁気構造への適用を念頭におき、実空間で計算する手法の開発と応用に取り組んだ。特にトポロジカルホール効果に着目し、どのようなサイズのスキルミオン格子の時に最もホール効果が大きくなるか、という問題を考察した。
(3) マルチポロニクスデバイスにむけたシミュレーションとしては、反強磁性体におけるスピントランスファートルクの問題や、トンネル磁気抵抗の問題についてのモデル計算を行なっている。これらは次年度以降、第一原理計算に立脚したより現実的な計算に対する指導原理を与えるものになる。
このほか、合金の問題を取り扱う第一原理手法の開発にも取り組んだ。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
鈴木 通人 | 東北大学 | 金属材料研究所 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
袖山 慶太郎 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | 統合型材料開発・情報基盤部門 | グループリーダー | (Kakenデータベース) |
是常 隆 | 東北大学 | 理学研究科 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2021-04-05 - 2024-03-31
【配分額】42,510千円 (直接経費: 32,700千円、間接経費: 9,810千円)