理論計算による立方晶窒化ホウ素薄膜堆積過程の研究
【研究分野】表面界面物性
【研究キーワード】
立方晶窒化ホウ素 / 薄膜堆積過程 / 分子動力学法 / 密度汎関数法 / 高速入射粒子 / 帯電効果 / 拡散増強エピタキシー / 古典分子動力学法
【研究成果の概要】
立方晶窒化ホウ素(cBN)は、ダイヤモンドに匹敵する優れた特質を持つことから幅広い応用が期待されているが、まだ実用化に十分な膜厚・品質の薄膜を得るに至っていない。一層良質なcBN薄膜を得る上で薄膜堆積過程の微視的な解明が重要であることは認識されてきているが、最近の実験で得られた知見を考慮した理論計算はまだされていなかった。以上を念頭に本研究では、グラファイト的BN(gBN)層からのcBN核形成などの重要な薄膜堆積素過程に焦点をあて、その微視的過程を古典分子動力学法や第一原理電子状態計算などの理論計算手法を用いて解明することを目的とし、さらにその知見に基づいて良質なcBN薄膜作製のための指針を得ることを目指した。
まず、gBN基板への高速B、N粒子の入射を古典分子動力学法によって調べ、標的中での4配位欠陥構造の形成とこの欠陥構造のクラスターとしてのcBN核の形成を明らかにし、これを基にcBN結晶成長プロセスの微視的モデルを構築した。次に、cBN薄膜形成の促進因子を計算で探索する試みとしてgBN結晶からcBN結晶への相転移における荷電状態の影響を第一原理計算で調べ、荷電粒子入射に伴う帯電効果がこの転移を促進する可能性を明らかにした。さらに、cBN表面上の拡散増強エピタキシーによるcBN薄膜成長の可能性を検討し、この可能性を強く示唆する結果を得た。
この他にも、gBNからcBNへの相転移過程が純粋斥力によるアルダー転移の範疇で捉えられることを明らかにしたこと、開発したグラフィクス表示プログラムが銀吸着シリコン表面の構造揺らぎと欠陥等によるそのピン止めの理論解析に貢献したこと、帯電状態の研究が電場・バイアス電圧印加系における構造緩和効果の研究に発展したこと等、副次的な成果や展開も得ることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
古賀 裕明 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科 | 特別研究員(DC1/">(Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】4,700千円 (直接経費: 4,700千円)