パルス印加による恒常的量子相変換の学理創成と再構成可能な非散逸電流回路への展開
【研究キーワード】
準安定 / 超伝導 / 急冷 / 磁気スキルミオン / ドメインエンジニアリング / 相転移ダイナミクス / 実空間観測
【研究成果の概要】
準安定相の創出を目指す上で、相競合している1次転移系が有望な候補物質であることが、我々のグループの過去の研究から経験則として浮かび上がりつつあるものの、その微視的な意味は明らかになっていなかった。そこで本年度は、相競合している1次転移系であるマルチフェロイック物質(Fe0.95Zn0.05)2Mo3O8に着目し、走査型磁気力顕微鏡(MFM)を用いて一次相転移ダイナミクスの実空間観測を行った。低温環境下(30K以下)において、磁場を高磁場(7T)から下げると、試料表面において強磁性相の母体の中に円形状の反強磁性ドメインが時間と共に成長していく過程が観測された。このドメイン成長速度の温度・磁場依存性を精査し、相図上における熱力学一次相転移線からの磁場方向の距離ΔHの関数としてこれを解析したところ、ドメインの成長速度はexp(-const./ΔH)に比例し、いわゆるcreep運動を記述する式として知られているMerz’s lawによってよく記述されることが分かった。この温度・磁場に依存するドメイン速度の“等高線”を相図上に描くと、実験的に観測される1次相転移ヒステリシス線の振る舞いをよく再現した。また、ヒステリシス線は磁場掃引速度の関数として振る舞うことが見出されたが、その系統性は、MFM測定から得られたドメイン速度の温度・磁場依存性に適当なドメイン成長モデルを適用することで半定量的に説明可能であることが分かった。以上のことから、急冷による準安定相の創出を目指すにあたり、相競合領域においてドメイン成長速度が低温域において遅延化することが重要な役割を果たしていることが分かった。
また、上記の実験とは独立に、フェーズフィールドシミュレーションによって、試料サイズ・冷却速度を制御パラメータに採った、最低温における相転移度合いを表す動的な相図を作成した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2021-04-05 - 2025-03-31
【配分額】40,950千円 (直接経費: 31,500千円、間接経費: 9,450千円)