量子クエンチに基づく強相関電子系の新規量子相の探索
【研究キーワード】
量子クエンチ / 非平衡 / 超伝導 / 電荷密度波 / 光誘起相転移 / テラヘルツ / 非線形光学応答 / 超高速分光 / 原子層物質 / 鉄系超伝導体 / 銅酸化物高温超伝導体 / 強相関電子系 / 集団励起 / スピン密度波 / ヒッグスモード
【研究成果の概要】
超伝導と電荷密度波(CDW)といった多重の秩序が競合共存する系を対象に、光学的量子クエンチの手法を用いて、新たな量子相の探究を行った。遷移金属ダイカルコゲナイド物質ではCDWの振幅モード励起を介した相転移を初めて実現した。鉄系超伝導体では、光照射により超伝導が増強することを非線形テラヘルツ分光から明瞭に実証した。ストライプ秩序を発現するLa214系銅酸化物高温超伝導体では、電荷秩序とスピン秩序、超伝導との競合・相関をダイナミクスから調べる新たな手掛かりを得た。Y123系銅酸化物高温超伝導体では光励起により平衡状態の超伝導とは異なるコヒーレントな電子状態が発現している可能性が高いことを見出した。
【研究の社会的意義】
光学的量子クエンチによる新たな物質相の探索という新しいアプローチを具現化し、遷移金属ダイカルコゲナイド物質、鉄系超伝導体、銅酸化物高温超伝導体において非熱的電子相制御に道を拓いた本研究は、非平衡物性科学の進展に大きく貢献したといえる。鉄系超伝導体の光誘起超伝導増強、銅酸化物高温超伝導体の光誘起相の解明は、その多様な基底状態、超伝導発現機構の解明にも貢献すると期待される。量子相の人為的相制御の実証は量子物質の機能応用の観点からも社会還元につながる重要な進展である。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2020-04-01 - 2021-03-31
【配分額】26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)